2016.06.02 Thu

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第12章「その9:試合数・練習量・待遇・運営費……Fリーグと関東リーグの現状を比較する」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 2007年10月20日、関東リーグ1部は第11節まで進んだ。12節は12月15日である。一方、Fリーグは、12月2日に11節まで進んでいる。つまり、約3ヶ月先行して開幕した関東リーグをFリーグはチーム数が同じ8チームながら日程面でほぼ追いついたのである。

 なぜかというと、関東リーグは会場の関係から間が空くのに対して、Fリーグは毎週試合をこなしたからである。しかも、関東リーグは例年のことであるが、11月から12月上旬くらいまで、選手権の都県予選のために一時中断になる。(Fリーグは予選免除のためそのような中断はない。)

 そんな話題に触れたことで、関東リーグ1部とFリーグを比較してみよう。といっても戦力の比較をしても仕方がないので、運営面についての現時点の比較をしてみる。

 試合数は、関東リーグは1チームあたりホーム&アウェイの2試合、9チームあるので、1シーズン合計16試合をこなす。一方、Fリーグは、12チームで3回戦方式だから1チームあたり1シーズン33試合をこなす。関東リーグの約2倍の試合数である。実力に差が出るのはやむを得ないところであろう。ちなみにスペインリーグは、16チームあるので1チームあたり30試合である。

 開催形式は関東リーグは地域内での比較的移動距離が少ないセントラル方式、Fリーグは、全国リーグなのでシーズン中数回開催されるセントラル大会を含め、ホーム以外は移動をともなう開催である。したがって、移動にともなう経費がFリーグは大きな負担となっている。

 次に試合を支える練習であるが、関東リーグは、チームによってばらつきがあるが、少ないチームで週2日、多いところだと、試合も含めて週5日である。時間帯は借りているコートにもよるが、公共施設だと遅くはできないため、勤めている選手にとっては厳しい。Fリーグの正確なデータは持ち合わせていないが、基本的には試合を含めて週5日となっている。時間帯は、恐らく専用コートを持っていないクラブでは関東リーグとそう事情はかわらないのではないか。フットサルクリニックを副業にする関係で、昼間に練習をするケースもある。名古屋オーシャンズは突出していて、専用コートを持っているので、2部練である。

 では、試合の中身、保有選手数はどうかというと、関東リーグは1チーム20名程度、Fリーグが18名程度で、総勢では160名と144名、若干関東リーグの方が多い。これは、Fリーグは人件費がかかるため、人数を絞っているからである。今ではさらに絞っている。

 その給与だが、関東リーグは、助っ人の日系ブラジル人に支払うケース、シャークスなどのようにFリーグに参入する前提で支払うケースがあったが、基本的には無給である。Fリーグは、バラツキがあるようだ。名古屋オーシャンズのように完全プロ化のところもあれば、原則無給のところもある。ただ、宿舎の用意、仕事の斡旋、出場給で補填などさまざまな形で援助が行われている。つい最近、中日スポーツ新聞に名古屋オーシャンズの年俸推定の記事が出ていたが、名古屋の平均年俸は700万から800万、チーム最高年俸は最近帰化した日本代表酒井ラファエルが1800万とあった。これからは、Fリーグに優秀な選手に入ってもらうためには、年俸が重要であることは言うまでもない。

 もう1つの大きな違いは、スタッフの数である。関東リーグは無料であることもあって、多いチームで代表、監督、トレーナー2名、マネージャーが2,3名といったところであろうか。ほとんどがボランティアで無給である。Fリーグの場合は、法人および有料試合の運営を行う以上、社長、経理、さらに営業、会場運営など、アルバイトも含めてより多くの人数が必要となる。

 結局、これらの違いは、チームの運営経費に現れてくる。関東リーグの場合は、練習量によってばらつきがあるが、100万から300万くらいの経費が必要である。Fリーグの方は、これもばらつきがあるが、5千万から1億~2億程度かかるといわれている。関東リーグの場合は、人件費は少なく、練習場の確保が多くを占めるが、Fリーグの場合は、人件費が半分弱を占め、続いて運営費、特に移動の経費の占める割合が高い。Fリーグの場合、人件費はチームの戦力と直結する要素となっており、おろそかにはできない。

 以上、関東リーグとFリーグについて、運営面の比較を行ってみた。さて、ここから何が見えるのだろうか。

 関東リーグについていえば、収入なしで時間と経費を割いてチームをここまで突き動かした原動力は、三国志風にいえば成り上がり、下克上のモチベーションである。シンプルに上手くなりたい、強くなりたい、名をなしたいという願望が、自己犠牲を上回り、ここまで来たといえる。しかし、その自己犠牲は前述した金額から見てもわかるように許容範囲に留まる限りはできることであって、許容範囲を超えれば破綻するのである。

 もう一つは、全く手が届かないところにあるのでなく、手が届く範囲に見えるから頑張れるのであろう。かくて、新規参入、分裂、合併、移籍などを繰り返しながら、次第に成長していった。また、見る方も、もしかしたら自分もその仲間に入れるかも知れない期待感やダイナミックに成長していく様子など、それが面白かった側面がある。悪く言えば、サッカーほど、厳しいふるい落としの仕組みがないものだから、チャンスが多かったことも確かである。現実に多くの選手、チームがこの10年間で名を成した。

 一方、Fリーグは、ビジネスの要素が入っているため、選手だけが関東リーグ時代のようにただ頑張れば済むというわけにはいかない。それは、経費が約20倍から30倍、場合によっては100倍以上の開きがあることからもわかる。もはや、自分も仲間に入れるかも知れない楽しみ方や合従連衡の面白さだけで見る者を納得させることはできない。したがって、レベルの高い試合を見せることで、入場料収入、スポンサー収入などを得なくてはならない。つまり、Fリーガーになるなど夢のまた夢くらいに関東リーガーに思わせる突き抜けた力を見せつけなくてはならない。つい最近、デウソン神戸の松宮が「Fリーガーが民間大会で圧倒的な差を見せつける意味」というコラムを書いていたが、同じような意味である。

 このためには、人材の育成、指導体制が急務であろう。しかし、サッカーと違って、学校スポーツ、社会人スポーツの後ろ盾がないため、一朝一夕にその体制はできない。また、サテライトを育て、維持するには、お金がかかる。これからは、指導、育成面での仕組み作りが課題になると思われる。

 Fリーグが誕生して、今や10年目を迎える。当時は、人材供給源だった地域リーグの先人達も年をとってしまった。相根澄、難波田治、藤井健太、市原誉昭、前田喜史らの第1世代から様々なノウハウを受け継いだ第2世代の金山友紀、鈴村拓也、木暮賢一郎、小野大輔、小宮山友祐、豊島明、丸山哲平らはすでに30代半ばとなり、木暮、豊島、丸山が現役引退した。若いといわれた1980年初頭生まれの第3世代、稲葉洸太郎、北原亘、高橋健介、小山剛史、横江怜らもすでにベテランである。北原、高橋は昨シーズンで引退した。

 逆にいえば、いわゆるレジェンド達が指導の立場になる時代を迎えたといえる。実際、前述した選手の中では、古くは相根がステラミーゴいわて花巻、湘南ベルマーレの監督、木暮はシュライカー大阪の監督(つい最近は国際親善試合限定の日本代表監督)、高橋はバルドラール浦安のテクニカルダイレクター、豊島はアグレミーナ浜松のコーチ、丸山は2016年度から大阪府のU—23選抜の監督に就任。ほかにも、C級、B級の指導者ライセンスを取得する地域リーグ出身Fリーグ経験者が続々出現している。

 地域リーグには、お金には換えがたい向上心を持ち、Fリーガーを目指す若い人材は数多くいるので、Fリーグ設立時の単なる選手移籍とは違った指導の形で、地域リーグとFリーグの交流がこれから進むことを望みたい。実際、関東リーグ1部では、吉成圭(元シュライカー大阪)がファイルフォックスで選手兼務ではあるがファイルフォックスの監督、西野宏太郎(元シュライカー大阪)がリガーレ東京で、同じく選手兼監督となっている。

 さて、お宝写真は、Fリーグと関東リーグが並行に行われ、そのはざまで揺れた選手達の象徴ともいえる2人の選手の写真にしよう。並行で行われた関東リーグの最終節が終ったあと、ファンとお別れの記念撮影をするファイルフォックスの村上哲哉と吉成である。彼ら2人は、シュライカー大阪の移籍が内々決まっていた。村上は、難波田、小宮山の後を継いで急成長した選手で、その後は日本代表でも守備の要となっていた。吉成も、この並行シーズンではリーグ得点王を獲得、ベスト5にも選ばれる成長を見せた。関東リーグが終わったことで、Fリーグ2年目の移籍劇がもはや始まっていて、その流れは加速する一方になった。そして、約10年、逆の流れが始まろうとしている。

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

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