2016.05.11 Wed

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第12章「その4:強豪シャークスがFリーグ参入のために目論んだ“関東脱出計画”」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 府中アスレティック、ファイルフォックスがFリーグ参入ならなかったため、多くの選手を失ったと同じようにシャークスも3人の選手を失った。沖村リカルド(シニーニャ)、関は湘南ベルマーレ、西野宏太郎はシュライカー大阪に移籍した。 

 実は、シャークスの代表石川昌史は、2006年の全国リーグ参入エントリーで落選して以降、2年後の追加エントリーの秘策を練っていた。関東はすでに町田、浦安、湘南の3クラブが参入、府中アスレティックは落選したが、噂によれば府中体育館の改修が決まれば確実に4クラブ目が約束されているという。したがって、関東に5クラブ目は厳しいことが予測された。また、いろいろ調べてみると、やはりスポンサーの力が必要ということもわかってきた。

  そこで、石川はシャークスの関東脱出を計画する。もともと石川は静岡県三島の出身で、シャークス自体、伊豆の韮山高校サッカー部のOBが集まって作ったチームであった。そこで、静岡県にシャークスを移すことを目論んだ。幸いなことに静岡といえばサッカー処であり、東海地区は名古屋オーシャンズしか参入していないので、2クラブ目の可能性は十分あると踏んだ。また、地方の方がスポンサーも見つけやすいし、2000人規模の体育館も見つけやすい。そんな思いから、スポンサー集めに奔走、なんとか、その目処が立つに至ったのが、奇しくもFリーグの1次登録締め切りと同じ3月末であった。

  当然、シャークスのチームメンバーは、その動きは知っており、シャークスに留まって、2年後を目指すのか、どこかFリーグに移籍を模索するか随分迷ったことであろう。同じような状況は、府中にもあったが、決定的に違いがある点は、府中の場合は、本拠は変えなかったが、シャークスの場合は、伊豆に練習場を求め、戦いの場所は、少なくとも2007シーズンは関東リーグを目指すことにあった。

 この結果、チームメンバーは、伊豆の練習体育館で練習するために、用意された合宿所で寝泊りするか、東京から通うことを余儀なくされた。その結果、仕事との両立を考えた場合、アマチュアリーグで十分とエンジョイフットサルもしくはもうちょっと上のレベルの留まる選手、とりあえず、東京を拠点として機会を狙う選手が現れるのは当然であった。前述したFリーグ登録3選手以外に、村松、下山がデルソール中野(当時は東京都2部)、ゴールキーパー角田がカフリンガ(当時は関東リーグ2部)へと移籍した。

  一方、実力ある選手を引き止めなくてはならないため、プレデターや大洋薬品バンフが行ったように、一部の選手とはプロ契約を結ぶことになった。この結果、神敬治(のちにバサジイ大分、エスポラーダ北海道)、大森茂晴(のちにバルドラール浦安、マルバ)の引き留めに成功した。また、所属選手は、上記2名に加え、松浦英(のちにステラミーゴいわて花巻)、渡辺良太(のちに湘南ベルマーレに復帰)、セレクションで獲得した岡崎チアゴ(のちにステラミーゴいわて花巻、デウソン神戸)ら16選手を確保できた。

 監督には、第9回関東リーグが始まる6月には、スペイン人監督パコ・アラウホ(のちにステラミーゴ岩手花巻の監督)を招聘するなど、シャークスの準備は順風満帆に思えた。しかし、練習拠点は関東以外(居住は関東)、戦いの場所は関東の二重構造の矛盾が良い結果をもたらすことはなかった。そのうち、シャークスの悲劇が始まるのである。

 華やかなFリーグ設立と移籍の影で、もう一つの移籍劇が同時進行で行われていたことを知る人は少ない。

 さて、お宝写真は、もう一つの移籍劇の象徴とも言えるシャークスの神にしよう(フットサルナビ提供)。神は、言うまでもなく北海道出身で、2006年のこの年に北海道のダイワスポーツSFCからシャークスに移籍した。ダイワスポーツは、全日本選手権、地域チャンピオンズリーグなどに出場する北海道の強豪で、神自身も日本代表候補に何度も選ばれる実力の持ち主で、長身のドリブル突破から繰り出す強烈なシュートが持ち味であった。

 神にしてみれば、北海道がFリーグに参入できなかっただけに止むに止まれず、上京を決意したのであろう。そんな神を関東に誘ったのが、第3章その2に紹介した同じ北海道から上京したGK角田磨人であるという。角田は、最初はウイニングドッグに移籍したが、ガロを経てシャークスに在籍した経緯がある。ちなみに、北海道の選手が関東に移籍する例は、それほど多くなく、つい最近、エスポラーダ北海道の室田祐希がペスカドーラ町田に移籍のニュースが驚きを持って伝えられた。

 神は、この年の11月のポルトガル遠征で念願の日本代表に選ばれ、翌年の3月のブラジル遠征にも選ばれた。しかし、シャークスはご存じのとおり、まさかの結末を迎え、神はバサジイ大分に移籍、現在は、出身地北海道に戻り、エスポラーダでプレーしている。

 10年目を迎えるFリーグ、神にとっての10年は激動の10年だったに違いない。

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

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