2016.04.15 Fri

Written by ROOTS

インタビュー

己を磨き続ける“金狼” 森岡薫のROOTS。「自分に自信がないこと、それがルーツ」

一つずつクリアしていくこと

 森岡は2015シーズンの終了を待たず、名古屋から今シーズン限りでの解雇を言い渡された。1月10日、Fリーグ9連覇を達成した翌日、彼自信、耳を疑うようなフロントの提示だった。

「結果がすべて」。

 そう考えていた森岡は常にクビを切られる覚悟を持って日々を過ごしてきた。それでも、「まだ俺はこのクラブに貢献できる」と、信じて疑わなかった。事実、連続得点王は途切れたものの、得点ランク2位のゴール数、ベスト5、目に見える結果もそうではない結果も残していた。だからこそ、まさに青天の霹靂だった。

 クラブの通告を受けてから次のクラブを探す間もなく、日本代表に召集され、9月のワールドカップ出場権を懸けたAFCフットサル選手権に臨んだ。

 2連覇中のアジア王者として戦ったものの、誰もが予期せぬ結果が待っていた。グループステージでは3連勝で抜けたが、格下・ベトナム代表に準々決勝で敗れ、W杯出場を懸けた5位決定プレーオフでも初戦のキルギスタン戦で惨敗。3大会続いたW杯出場を逃し、森岡自身、2度目のW杯出場は叶わなかった。

「そこにまた立ちたいと思って、4年間必死にやってきた」。

 だからこそショックは計り知れないほど大きく、「正直、試合後は現役引退も考えた」。

 大会から5日が経過した2月23日、帰国した森岡は、「今後も日本代表に呼ばれるなら、絶対に行きたい」と語った。そしてインタビューの去り際、こんな言葉を漏らす。

「今の代表で、俺の代わりになる選手はいる? いないでしょ」。

 森岡らしい、自信に裏打ちされた強気なコメントだった。彼の圧倒的な存在感は、日本が敗れても、消え去ることはない。彼は今でも、日本のトッププレーヤーに違いなかった。そしてこの「自信」こそが、森岡が森岡たるゆえんに他ならなかった。

「自分に自信がない」。

 森岡は自身のルーツをそう表現する。

「俺は自信に満ち溢れた人じゃない。だからこそ人の倍以上やらないと、成功しないと思っている」。

 2015シーズンは足首の手術に踏み切り、1カ月ほどチームから離脱し、6試合を欠場。そして復帰後の5試合は、全くゴールを奪えなかった。

「引退も考えた。それはやっぱり、自分に自信がないから。でもプレーオフでも、コロンビア代表との親善試合でも結果を残して、自信を取り戻せた。それまでの期間は、何倍も練習した。それをやらなかったら終わっていたと思う」。

 小さい頃からそうやって一つずつ、目の前のことに向き合い、自信のない自分との戦いに打ち勝ち、結果を残し続けてきた。周囲は森岡に対して、「次のワールドカップの目標は?」、「今シーズンは何点が目標?」と問う。そうした質問に答え、期待に応えることは、優れた選手に課せられた使命でもある。でも心中は、そんな先のことなど答えようがないというジレンマもある。

「いつだって目の前の試合のことしか考えていない」。今を生きる森岡にとって、それがすべてだった。自信ががないからこそ頑張る。「自信はないけど、成功すれば、誰よりも自信を持てる」。そうやって頂点に立ち続けてきた。

 数カ月後、どこでプレーしているのか、まだ誰も知らない。自分自身でも、行き先を決めているわけではない。でも一つだけ確かなことがある。森岡はどこにいても、常に全力で、誰よりも「自信」に満ち溢れ、人々を魅了するプレーを続けているだろう、ということだ。

※本記事は、Football Culture Magazin ROOTS Vol.08(2016年3月発行)に掲載された内容です。

記事提供元
ROOTS
「フットボールをより多角的な視点から伝え、フットボール文化を根付かせる」をコンセプトに運営しているフリーマガジン&WEB。

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