2016.03.23 Wed

Written by EDGE編集部

全国大会

「若くて勢いのある選手に気持ち良くプレーさせたい」。“天才レフティ”篠崎隆樹が見つけた新たなプレースタイル。

写真:本田好伸

長く、フットサル界を見てきた人にとって、篠崎隆樹のプレースタイルの変遷を感じる人は少なくないだろう。2007年、関東リーグ2部から“飛び級”で湘南入りしたテクニシャンは、左足を自在に操り、見る者を魅了してきた。しかし町田に移籍して以降、「個人技」と「チームプレー」の間で揺れた。出場機会を失うことも増え、悩み、葛藤しながらのプレーは、本来の出来とはほど遠いものだった。そんな暗闇を抜けた篠崎は、誰よりもチームのバランスを重視している。元来の器用さを生かしたそのスタイルは、昨シーズン町田から引退した大地悟を思わせる。自身初タイトルを手にした篠崎はどのように変化したのか。
(文・本田好伸)

周囲を生かすことが自分の役割

篠崎隆樹(ペスカドーラ町田)

——改めて、優勝おめでとうございます。篠崎選手にとってこのタイトルは初めてだと思いますが、喜びの味はどうでしたか?

大きなタイトル自体が初めてでした。ちょっと言葉で言い表すのは難しいですね。本当は最後、終わる前に2点差が付いていたことで涙は出ないだろうなと思っていたのですが、やっぱり勝手に涙が出て、体がそういうふうになっているのかなと。本当に言葉で表せるものではなかったです。

——勝った瞬間はどんな感覚でしたか?

パワープレーをやられていたので、パワープレーのディフェンスのメンバーに託していたので、そういった意味でも仲間を信じて戦っていました。チームのみんなで戦えたことが勝因かなと思います。

——素晴らしいゴールを挙げましたが、決勝の舞台でゴールを決めた感触はどうでしたか?

気持ち良かったですが、そのあとすぐに失点してしまったので気持ち的には難しかったです。でも選手権の準々決勝からの試合を見て、名古屋の分析もするなかで、裏にチャンスがあることは感じていました。ああいうところに入っていければゴールにつながるシーンはあるのかなと思っていました。

——町田の1点目のコーナーキックも裏が空きましたね。

そうですね。やっぱり名古屋は前には強いと思うんです。一発で取りに来ますし、奪われてからの失点もありました。特にブラジル人などはそういう部分で強さを見せる一方で、ルーズな部分もあると思うので、そういうところを突ければ名古屋を相手にはチャンスがあるなと。自分たちがやっていたクワトロのセットでやっていければ必然と勝利できるなと前日から感じていたので、どんなゲームになっても勝てる自信はありました。

——篠崎選手自身は良いコンディションで過ごしたシーズンだったのではないでしょうか。

そこまで意識はしていないですし、チームに貢献できるようにということしか考えていませんでした。自分のことというよりはチームを救うためにディフェンスで体を張るとか、チームが点を取るために動くということをしないといけなかったシーズンかなと感じています。

——過去のシーズンよりもその意識が強かった。

そうですね。それは(昨シーズン限りで引退した)大地(悟)さんの存在がすごく大きかったなと。ああいうふうにバランスを取れる選手がいるからこそチャレンジできる選手がいて、大地さんがいないことでそのチーム内のバランスが変わってきていたので、その役割を自分がやらないといけないとシーズン前から思っていました。

——監督からそこを求められていた?

特にそれはないですね。今年はチームのみんなが副キャプテンに選んでくれて、そういう責任感も強くなりましたし、それらを踏まえてやっていました。

——岡山監督の下で1シーズンをやってみてどうでしたか?

苦しい試合もありましたし、逆にすごくよくできた試合もありました。そのムラがありながらも、全員で戦えたことがすごく大きくて、例えば主力の選手がケガをしたときに、それまで出られなかった選手が活躍して勝利をつかんだり、そういうチーム全体として軌道に乗れたのかなと感じています。ただプレーオフでは裏目に出てしまい、自分たちの力を発揮する前に終わってしまいました。今大会では、来シーズンにならないと返せない借りを返せるチャンスがあったので、今シーズンのうちにそれを果たそうという気持ちがみんなのなかにもあったと思います。

——リーグ優勝とはまた違いますが、それでもこのタイトルはどうしてもほしいものだった。

選手でやっている以上、タイトルはほしいものですけど、でも試合前日にみんなに話したのは、「(前身の)カスカヴェウがあってペスカドーラになって、10年間このファイナルにすら立てなかったなかで、そこに立つ責任と自信を持ってチームの歴史を変えていこう」と伝えました。僕が言うまでもなかったのですが、一人ひとりがチームのために戦うという気持ちでできたことがこういう結果につながったのかなと思います。

——「町田にタイトルを」と言い続けたシーズンでした。ここで結果を残したことが自信となり、来シーズンはもっと変わっていけるのではないでしょうか。

リーグ戦を戦いながら、そういう自信はあったと思います。プレーオフはうまくいかなったですが、そこで気持ちが折れるのではなく、こうして選手権のシードを与えてもらってこういう舞台に立てることは、他のチームからすればうらやましいことだと思います。そこに立つ責任とプライドもあったので、自分たちのフットサルを見せられればどんな相手でもやれると思いましたし、そのメンバーはそろっていました。

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自分の生きる道

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