2016.03.09 Wed

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第10章「その8:Fリーグ開幕前夜。いつもとは違う特別な関東リーグが始まった」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 2006年6月10日、駒沢体育館にて、第8回関東リーグが開幕した。全国リーグ開幕前の最後の関東リーグである。7月には、全国リーグ参入要綱の詳細が発表される予定であるから、リアルの戦いと「場外の戦い」が同時進行で行われることとなった。

 すでに、この1ヶ月ほど前、5月17日には、大洋薬品バンフが、華々しく、新たな選手発表の記者会見を開き、打倒関東の狼煙を上げていた。すでに紹介した定永、森岡、豊島、野島倫、北原、上澤に加えて、松宮充義(マグ、のちにシュライカー大阪)、ボラ、マルキーニョス、山田ラファエルユウゴらブラジル人らのメンバーが明らかにされた。

 一方、関東の方は、専門雑誌でアンケートや予想記事が掲載され、プレデター、府中アスレティック、カスカベウ、ファイルフォックス、フトゥーロ、ロンドリーナ、マルバ、シャークス、ブラックショーツ、ボツワナ、小金井ジュールなど実に11チームが参入の意思もしくは前向きに検討すると報じられた。

 恐らく、全国リーグ初年度の参入チーム数は8から12くらいが予想され、全体のバランスを考慮するとそのうち関東は3から4くらいであろう。もし、前述したすべてのチームがエントリーしたとすると3倍から4倍の競争率ということになる。ちなみに、関東以外では、北海道が選抜チームで参加するといった報道がなされ、東北のパラゴスト(母体はかっての小白川FC)、東海は先行している大洋薬品バンフ、関西のマグ、セレソン、高槻松原FC、中国のSAファイターズなどが参加を検討したいという。関東と関東以外ではかなり競争率に差があった。

 そんな激戦区の中で、チームは参入を目指して、実績を残さねばならない。選手達も来るべき全国リーグに自分を高く売るために高い技術を見せねばならない。いつもとは違う特別な関東リーグが始まったというわけである。実際、第8回の監督、選手の移籍状況を見てみると、来年の全国リーグ開幕の影響が見られるものであった。

 まず、監督であるが、プレデターの監督に、昨シーズンはアドバイザーだったスペインのチャビが就任することになった。これは、監督の塩谷が、フットサル連盟の理事であり、全国リーグ立ち上げの事務局という立場上、退くという理由もあったが、プレデターを一段と高いレベルに引き上げるためには、スペインのフットサル導入が必要との思いからであった。チャビは、バルセロナFCでスペイン2部リーグ優勝の実績がある。

 一方、カスカベウは、ブラジルリーグのインテリからシダンを招聘、監督とすると発表した。カスカベウは、甲斐を筆頭にブラジル流に傾倒していたので、ブラジル流でチームのレベルアップを図ろうとしたのである。もっとも、実際には契約上のトラブルからか、来日せず、7月には契約解除が発表された。

 次に、府中アスレティックは、昨シーズンの不振から、総監督中村が再び監督に復帰、監督のアドリアーノがコーチという布陣で、全国リーグ参入の実績作りに背水の陣を引いた。

 監督人事ではないが、シャークスが名前をシャークス立川と改名、立川を本拠地として、地域密着をアピールしたのも全国リーグ参入の影響である。選手の方はというと、大洋薬品バンフが意識的にプレデター、カスカベウの実力2チームからの移籍を避けたせいか、他チームにおいて移籍が活発に行われた。

 まず、ファイルフォックスは、ピヴォの森岡の抜けた穴を府中アスレティックから三井を獲得、さらには攻撃も守備もできる伊藤を獲得した。2人はその後、湘南ベルマーレ、デウソン神戸のFリーグに移籍していく。

 ロンドリーナは、豊島、野島倫の抜けた穴を、ブラジルから、パルメイラスで活躍していたジオゴを招聘、はっきり全国リーグ参入を目指すと宣言した。ジオゴは、湘南ベルマーレに移籍、Fリーガーになったが、のちにステラミーゴ岩手の監督となっている。

 シャークスは、本格的に全国リーグ参入を目指し、遅れていた実績作りを取り戻すべく、大幅強化を図った。北海道の地域リーグで活躍、日本代表にも選ばれた神、ファイルフォックス、バンフ東北など選手権で活躍、お馴染みの沖村リカルド(この時はBFC KOWA)、千葉の柏からゴールキーパーの石井秀樹らを獲得、戦力強化を図った。神は、その後、パサジイ大分、現在(2016)は故郷に戻り、エスポラーダ北海道で活躍している。沖村は、その後湘南ベルマーレに移籍、現在は、退団している。石井は、その後、フウガに移籍、府中アスレティックを経て、引退した。

 カスカベウは、目立った大物選手の移籍はなかったが、ガロが1部を降格したため、ガロから横江怜を獲得した。横江はその後、日本代表としても活躍、ペスカドーラ町田にとってなくてはならない選手に成長した。

  すでにある程度戦力補強を終え、実績も作り、参入にも自信を見せるチーム、出遅れてこれから参入に力を入れるチーム、これらが入り乱れて、全国リーグ開幕前、最後の関東リーグが始まった。

 あらためて、次年度はいなくなるかもしれないチームも含めて、特別な第8回リーグのチームを順不同で列挙しておく。カスカベウ、ファイルフォックス、プレデター、府中アスレティック、シャークス、フトゥーロ、ロンドリーナ、ボツワナ、ブラックショーツ、セニュオールイーグルス、コロナFC/権田の12チームである。

 さて、お宝写真であるが、前述12チームのうちこれから旋風を巻き起こすボツワナの選手紹介の写真にしよう(関東リーグプレスより)。かなり、懐かしい選手がいるはずだ。奇しくもつい最近、フウガドールすみだになっても持前の気持ちを前に出してチームを牽引してきた金川が現役を卒業する発表があった。

 ここで紹介したいことは、写真もさることながら、ライターの新井泰嗣(元雑誌ピヴォのライター)の編集後記である。

「2007年の9月、ついに全国リーグが始まる。日本フットサル界は、とてつもなき大きな一歩を踏み出すはずだ。今からどのチームが参入するかなんていう話がちらほら聞こえてくる。でも、関東リーグにとっては、人気チーム、実力チーム流出の危機、彼らのいない関東リーグは寂しい。とはいえ、晴れの舞台である全国リーグに、関東リーグ出身チームがいないのはもっと寂しい。誰しもの願いは、競技としてのフットサルの市民権の獲得、そしてゆくゆくはプロ化。それまでの過程では、いろんなことが起こるでしょう。その第一段階が今なのかも。そんなことを考えると、後にも先にも、今年の関東リーグが最高の盛り上がりになるかも知れない。集客の多い駒沢での開催も多い。何よりも開幕前から関係者、ファン、選手の高揚感をひしひし感じる。今年はすごい年になる。」

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

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