2016.01.06 Wed

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第9章「その6:天国と地獄を分けたファイル小宮山の“残り4秒ゴール”」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 真夏の8連戦を終えた関東は秋の陣を迎えた。いつもの秋だったら、関東リーグを中断して、選手権の予選に突入するのだが、この年は、2ndステージで上位、下位に別れる最後の決着の戦いがあった。

 1stステージ最終節の第1試合、まず、シャークスが6-9で敗れ、上位リーグ残留の目を絶たれた。第2試合、ブラックショーツ対フトゥーロは4-2でブラックショーツが勝ち、府中アスレティックと勝ち点で並び、上位リーグ残留の目を残した。第3試合、プレデター対ガロ、カスカベウ対サルバトーレソーラは、ともに7-2でプレデター、カスカベウが勝利、したがって、得失点差は変らず、1位カスカベウ、2位プレデターほぼ確定した。

 問題は最終試合のファイルフォックス対府中アスレティック戦であった。ファイルフォックスはよほどの大差を付けて勝たない限り、2位をひっくり返すことはできない。一方、府中アスレティックは、ブラックショーツとすでに勝ち点および得失点差で並ばれているから、絶対負けられない戦いとなった。

 試合は一進一退、前半は0-0で終了、後半は1点ずつ入れて、残り時間が少なくなってきた。府中アスレティックはもはやボールを回して引き分け狙いとなった。しかし、残り4秒でドラマが待っていた。

 当時の関東リーグの速報はこう報じている。

残り4秒、:ファイル、左サイドの森岡のロングキックイン、浮いたボールを右の小宮山がダイビングヘッド、決まって、2-1〈小宮山)。このままタイムアップ、2-1でファイルの勝利、府中アスレティックはこの結果、下位リーグへ、ブラックショーツが得失点差1で上位リーグとなった。

 勝負の世界にタラレバはないとはいえ、わずか4秒前までの同点ならば、府中アスレティックは上位リーグに残ることができたのだ。上位リーグならば、がんばれば優勝の可能性もあるが、下位リーグは優勝の可能性はない。つまり、早くから全国リーグ参入を表明し、戦力強化を図ってきたプレデターと府中アスレティックは、実績を残したいこのシーズンを、わずか4秒でファイルフォックスに明暗を分けられてしまった。

 残り33秒に続く残り数秒のキックインドラマの第2弾であった。

 実をいうと、プレデター監督の塩谷と府中アスレティック総監督中村(監督はアドリアーノになっていた。のちにシュライカー大阪監督)は、奇しくもともに1968年生まれの同い年である。そして、ともにフットサルの揺籃期からフットサルの普及に力を注ぎ、スーパーリーグの立ち上げ、関東リーグの運営など、苦楽をともにした仲であり、ライバルでもあった。今でこそ、両チームはFリーグで同じ舞台にいるが、最初のFリーグ参入チーム選考にはプレデターが先んじて、府中アスレティックは選考から漏れてしまった。今にして思えば、このことを暗示していたのかも知れない。

 一方、両チームの明暗を分けさせたファイルフォックス監督の松村と中村も因縁があった。すでに本書の冒頭で紹介したとおり、2人は競技フットサルの草分けチーム府中水元クラブを創設、第1回選手権に参加したのだった。それは1996年1月、この年からすると約9年前のことである。しかし、2000年8月、2人は袂を分かち、中村は府中アスレティックを創設する。

 一方、松村はその後、請われてファイルフォックスの監督になり、ライバルチーム同士となるのだった。そして、この時はまだ想像できなかったが、両チームは全国リーグ参加を巡って、府中市内での選考争いへと発展する。

 残り4秒ちょっとのキックイン、そして小宮山のヘディングシュートが決まり、時計が残り4秒で止まった瞬間、ファイルフォックスのベンチと上位リーグが転がり込んだブラックショーツの選手、サポーター席からは大きな歓声が巻き起こった。一方、呆然とする府中アスレティック、残り1秒までわからないフットサルの面白さ、怖さの瞬間であった。

 しかし、まさか、この試合から1ヶ月後の10月29日に行われた第11回選手権都予選にて残り1秒のキックインで一気にそのファイルフォックスが暗転させられるとは、観客はもとよりファイルフォックス自身も全く思いもよらなかった。

 さて、お宝写真は、前回に続いてフットサルナビの1stステージの全試合レポートから、残り4秒の劇的ドラマの記事にしよう。奇しくもこのドラマも前回と同様、ヘディングシュートであった。この結果、ブラックショーツと府中アスレティックは勝ち点18で並び、得失点差が8と7、わずか1点差で、上位と下位に分かれたのであった。

 ちなみに、記事中の北智之は、目立たない存在であるが、難波田、小宮山、板谷らと並んでディフェンスの要として活躍、3人がいなくなったあとは、キャプテンとしてしばらくファイルを支え続けた。今は、難波田率いる「闘魂」でプレーしている。

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

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