2015.12.03 Thu

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第8章「その5:良い選手か悪い選手かは“首から上”で決まる? スペインの強さの理由」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 前回のコラムではスペインフットサルの運営面に触れたが、実力面についても触れておきたい。ここでは関東リーグに限らず日本全般と比較しながら紹介してみよう。 

 個人レベルについては、少なくとも日本代表クラスではあれば2部では十分通用することは、鈴村、木暮、小野、高橋、星らの実績から証明ずみであろう。1部では今季からマグナ・グルペアで吉川智貴がプレーしているので、吉川がどれぐらい活躍できるかは一つの指標になるだろう。

  チームレベルではどうであろうか。過去の単独チームで戦った実績を見てみると、2003年のプレデター遠征は、1部のバレンシアに0-13、2部のアルバセテに2-8と敗れている。しかし、これは、スペインローカルルールすなわちスローインで行われたゲームなので参考にしづらい。

 次は2004年のインターコンチネンタルカップのロンドリーナ対カステジョンで、これはローカルルールではないキックインで行われたもので、カステジョンに3-12で敗れている。2005年から2007年までは、奇遇なことにすべてブーメランとの対戦で、ファイルフォックス(0-7)、プレデター(0-8)、大洋薬品バンフ(0-8)が大差で敗れている。もっとも、ブーメランはインターコンチネンタル3連覇、すなわち世界一のクラブチームであり、実力差があるのは当然なのだが。

  むしろ、ボツワナ(のちにフウガ、この年度、関東リーグで優勝している)が2007年2月に行ったスペイン遠征の結果が参考になるかもしれない。このときは、鈴村、小野が所属するバルガス、タラベラのいずれも2部と戦ったもので、ルールもすでにキックイン方式に移行していたので問題はない。結果は、2-6、0-3であった。

  恐らくFリーグ上位チームで、2部の中位と同じぐらいではなかろうか。もっとも、外国人選手がいるかいないかによっても大きく変わってくる。例えば、今の外国人を含む名古屋オーシャンズが戦ったらどんな結果を出すか大変興味深いものがある。

 では、日本とスペインの差を生み出す、根本的な要因は何であろうか。

 キーワードとなるのが「判断力」である。

 今から5年前、2010年頃、関東リーグ1部の会場で、日本代表監督に就任したミゲル・ロドリゴが、関東リーグ1部の監督らと懇談会を行った。

 その席で、ミゲルが課題にしたのは判断力の向上であった。そして、判断力の向上は、判断を余儀なくさせる状況を作り出す普段の練習方法が重要と説いた。そして、それは子供の頃から学ぶことが重要で、キーパーのロングキックやバックパスなどの禁止を訴えていた。(最近も、子供がフットサルコートでサッカーボールを使ってサッカーの練習をしている姿を見て、SNSで憤慨していた)

  スペインが世界一になった理由は、ブラジルの個人技にチーム戦術を加えたからだとよく言われることだが、そのベースに判断力にあると考えるとミゲルの言葉も説得力が増す。実際、スペインの練習を見ていると、実によく練習中、プレーを止めて、そのときの判断が妥当だったかどうか監督と選手がレビューする場面が見受けられる。

  元スペイン代表監督のハビエル・ロサーノが、縁あってファイルフォックスの練習を見たときの言葉が印象深い。

 「ファイルフォックスの練習パターン自体は良いように思う。しかし、実際、瞬間、瞬間の細かい部分を見れば、なぜあのプレーをしたのかという理由までは外目にはわからない。監督はプレーの瞬間、瞬間に選手の頭の中に入ることをできない。テレビゲームのようにはいかない。大事なことは、瞬間、瞬間で最良の選択ができる『判断力』、『決断力』であり、最後はそれを選手が行う。良い選手か悪い選手かは首から上で決まる。日本人の課題として個人技の向上がよく言われるが、個人技向上の目的はシュートが上手くなることではなく、プレーの判断の質を向上させるために行うことなのである。なぜ、スペインは、みなが一斉に連動して走るかというと、最良の選択肢を与え、判断の質を上げるためである」

  スペイン人監督の2人が同じことを述べていることは興味深い。 日本人は勤勉で頭が良いとよく言われるが、ことサッカー、フットサルの判断力となると、まだまだ彼らには遅れていると言わざるを得ない。いみじくも、ロサーノはファイルフォックスの練習を見た締めくくりでこう述べた。

「今日の練習はどうでしたか? 何が良かったですか? 何が悪かったですか? 良い、悪いとした判断基準は何ですか?」

 冒頭のお宝写真は、まさにインターコンチネンタルカップに来ていた当時スペイン代表監督だったロサーノ監督とファイルの記念写真にしよう。

マルキーニョ

 もう1つのお宝写真は、同じくインターコンチネンタルカップで木暮とマルキーニョの記念写真としよう。この時、マルキーニョはインテルのメンバーとして戦い、優勝しているが、もともとはブラジル人で、ブラジル、スペインの両国で活躍したスーパースターである。この2人も、この時から6年後、名古屋オーシャンズで一緒にプレーするとは思わなかったであろう。マルキーニョは、2012年3月、1年間だけ名古屋でプレーして引退、ブラジルへ帰っていった。木暮は、その1年後に引退した。

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

関東フットサル三国志/バックナンバー

◀︎前の記事 トップ ▶︎次の記事