2015.09.09 Wed

Written by EDGE編集部

コラム

日本代表に欠かせない〝スペシャルワン〟

写真:河合拓

サッカー界で「スペシャルワン」と言えば、チェルシーを率いるジョゼ・モウリーニョ監督が思い浮かぶ。自らの監督就任会見で、決して欧州トップの経済力を持つわけではないポルトを欧州チャンピオンズリーグ優勝に導き、より大きなクラブであるチェルシーへ移った指揮官は自身を「スペシャルワン」と評した。
(文・河合拓)

 フットサル日本代表のミゲル・ロドリゴ監督が、初めてこのフレーズを使ったのは、オーシャン杯の決勝後のことだろう。準決勝の終了間際での同点ゴール、さらに決勝で古巣の名古屋オーシャンズから得点を挙げて、府中アスレティックFCに悲願の初タイトルを呼び込んだFP渡邉知晃に対して「おまえは、『スペシャルワン』だ」と伝えたという。

 同じ「スペシャルワン」だが、意味合いは大きく異なる。前者が「特別な存在」という意味であるのに対し、後者は「特別な試合で活躍する存在」という意味だ。意味は異なるが、共通していることはある。どちらも誰かが教えたり、身につけさせたりできるものではなく、先天的に備わった能力であるということだ。

 この「スペシャルワン」の意味を考えるきっかけとなったのは、合宿初日のミゲル・ロドリゴ監督の言葉からだった。監督に「今回のメンバーで誰が一番のサプライズだったか?」と聞かれた。唯一の初招集であるFP清水和也は、以前から将来性が高く評価されていたため、遅かれ早かれ、代表に選ばれるだろうと思っていた。そのため、サプライズとは少し違う。僕が驚いたのは、昨年9月のイタリア遠征以来、代表から遠ざかっていた32歳の稲葉洸太郎の追加招集だった。多分、監督は別の答えを期待していたのだろう。「稲葉洸太郎」と答えた直後に「森秀太は?」と聞き返されたからだ。

 稲葉と同じく1年前のイタリア遠征以来の招集となった森も、もう25歳。決して若手ではないが、稲葉ほど年齢は高くない。イタリア遠征直後にミゲル監督が収穫の一つとして、森のパフォーマンスを挙げて「Fリーグ全体の成果」と話していたことも覚えていたため、追加招集されても、それほど驚かなかった。

 そう説明すると、スペイン人監督は「そう、森はイタリア合宿で良かった」と頷き、稲葉がサプライズではないことを説明し始めた。

「洸太郎に関しては、状態が戻って来るのを待っていた選手です。去年は良い時期ではなく、調子も良くなかったと思います。今年、ちょっとずつパフォーマンスが上がって行き、昨日の試合は一番良かったです」

 昨日の試合というのは、合宿前日の6日に行われたフウガドールすみだ対名古屋オーシャンズの一戦だ。稲葉の所属するすみだは0-3で敗れたが、すみだの7番の活躍は、翌日の代表合宿に急きょ追加招集することを決意させるほどのものだったという。かくして稲葉は17人目の選手として、今回の大分合宿でメンバー入りした。では、監督が稲葉に見出している能力とは何なのか。それが冒頭の「スペシャルワン」の話につながってくる。

「すごく重要なポイントとして、他の選手とどこが異なっているか。彼は、本当に大事なゲームのときに絶対に良いパフォーマンス、力を見せるんです」

――いわゆる『持っている選手』で、ミゲル監督が特別な試合に力を発揮することから『スペシャルワン』と呼んでいる選手。渡邉選手もそうですよね?

「渡邉もそう。彼もスペシャルワン。渡邉が一番目のスペシャルワンで、洸太郎もそのタイプです。そういう選手は、だから最終的に、絶対にアジア選手権やW杯に連れていくというわけではないかもしれません。でも、そういう選手に『いつでもアクティブなんだ』と伝え、普段からそういう力を出し切れるようになってほしいと思っています」

 この場合の「スペシャルワン」は、よく言えば大舞台に強い選手。その一方で、相手の力が劣る場合は、ちょっと力を出し切れない、ムラッ気があることも意味しているだろう。もともと注目を集めるビッグマッチで活躍できる選手が、普段の試合から安定して活躍できれば、監督としては起用しない理由はなくなるはずだ。

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