2019.03.20 Wed

Written by EDGE編集部

Fリーグ

【伝説の証言者】狂犬と呼ばれていたあの頃。「頭の中の理性と野生が共存していた」(星翔太)

クラブではなく、人が先にあったフウガ

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 当時、メディアを通して発信されていたが、準々決勝で浦安に勝利した時、翔太は藤井健太から「これが終わりじゃなくて始まりだから」と言われた。その言葉はこの10年、彼の中でずっと反芻されてきた。

「一言で言えば『責任』です。それまではチームの責任を背負っていればよかったけど、あの時に健太さんからバトンを受け取りました。次もあるからと。あの時から、Fリーグや日本フットサルを背負っていくことを意識し始めました。優勝したからというよりも、Fリーグクラブに勝っていく中で得たもの。就活をやめて、ブラジルにも行って、フットサルで生きていくと決めたシーズンに、そういう出来事が重なりました」

 結局、日本一という結果は、翔太にとって特別であり、特別ではなかった。

「安堵。それだけでした。仲間と最後に思い出を残せてよかったなって。だからさっき言ったように、やっと終わったなと。翌週には地域チャンピオンズリーグもありましたから、『すげー嬉しかった』とかではなかったと思います」

 翔太はその後、フウガを退団して、浦安のオファーを受けてFリーグに移った。あの頃の浦安は、日本代表選手が何人も所属する日本人最強軍団であり、名古屋と2強を形成するクラブだった。翔太も日本代表に選ばれるようになり、それからずっと、日の丸を背負い続けていった。2010年にはスペインへ移籍して、フットサルへの探求をさらに深めながら、プレーヤーとしての幅を広げていく。2012年に浦安に復帰して、そこからの数年で名実ともにクラブの顔役へと成長していった姿は、誰もが納得する軌跡だった。

 藤井からバトンを受け取り、10年間、第一線を走り続けてきた。フットサルと出会ったフウガから始まったその道のりは、彼にとってはしかし、はたから見て感じるようなスター街道ではなかった。

「比較的、孤独でした。(全員がフットサルだけに専念するプロクラブの)名古屋であれば、プロフェッショナルな選手に触れて、日常に厳しさや難しさを感じたと思います。ですが全員がプロではない環境でプレーを続けてきましたし、しかもスペインに行ったことで、戦術や経験という意味でも先頭を走る感じになりました。誰かに何かを言ってもらえるのは日本代表に行かない限りはなくて、その難しさはありました。ただ性格的に自問自答は好きなので、反省しながらやってきましたね。満足することなく、常に成長を求めてきたからこそ、今があるのかなと。いろんな巡り合わせがあったと感じています」

 フウガでは日本一になれたが、自分が導いたわけではない。浦安でもタイトルを取れなかった。責任を背負った翔太にはずっと、誰よりも自分がやらなければならないという覚悟と決意があった。だからまだ、やらなければならないことがある。「次の世代にバトンを渡す」。例えばそれは、2020年のワールドカップを戦う日本代表メンバーであり、今、翔太が戦う名古屋の若手選手であるかもしれない。

「日本代表の選手としてなのか、その先は指導者としてなのか、分かりません。ただ選手でいる限りやるべきことは変わりません。ピッチで最大限のことをして、若手ともコミュニケーションを取って、日本代表やクラブに自分の経験を落とし込みながら、自分はゴールに絡む結果で、チームを勝たせ続けたい」

 翔太は、いろんなものを背負っている。でもそれは、フウガを経由したからこそだろう。

「フウガは、黎明期の頃から、自分の意思でフットサルを始めた人ばかりでした。関東リーグが(日本フットサルで)最強と言われた時代を見て、Fリーグができるのも見てきています。その中で、自分たちの足で歩んでいこうという選手を軸に出来上がっていったクラブ。クラブが先にあったわけじゃない。人があってのクラブでした。それが今も脈々と受け継がれているからこその魅力なんだと思います。それはすごいことで、いろんなものが整備されている今の時代には生まれづらいものかもしれません」

 だから翔太にとってのフウガも特別だった。狂犬と呼ばれた男は今、誰よりも理性的なプレーヤーになった。でもある瞬間、狂気を感じることがある。というよりも、淡々とプレーする中で、その時々のメッセージや情熱を見ることができる。

 安堵、成長、意思、孤独、そして責任。あらゆる要素が、そのプレーの原動力になっているからだろう。フウガという稀有なチームから、星翔太の進化は始まっていった。

Interview & Directed, Key Visual by Yoshinobu HONDA

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【Contents】【伝説の証言者】FUGA MEGUROはなぜ日本一になれたのか? 7人が明かす「史上最高の下克上」の真実に迫る

Witness 1 フウガ・イズムの生みの親と伝道師。「奇跡のチームはこうして生まれた」(須賀雄大監督&金川武司)
Witness 2 決勝の出場時間はゼロ秒。「あの試合がなければFリーグを目指していなかったかもしれない」(深津孝祐)
Witness 3 スタンドで涙を流した男。「出られない悔しさがなかったのはあれが最初で最後だった」(渡邉知晃)
Witness 4 勝ち越し弾、決勝弾を奪った男。「ヒューマンパワーにあふれたフウガが果たした役割」(荒牧太郎)
Witness 5 狂犬と呼ばれいたあの頃。「頭の中の理性と野生が共存していた」(星翔太)
Witness 6 奇跡のチームのその後のストーリー。「ただの通過点」(須賀雄大監督)と「達成感」(金川武司)
Witness 7 10年後の名古屋のキャプテン。「あの大会から、自分を含めた物語が始まった」(星龍太)
Afterword あとがきにかえて。「10年前と10年後の彼らが、“今”を生きる僕たちに教えてくれたもの」

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