2018.05.08 Tue

Written by EDGE編集部

コラム

フットサル選手として、ママとして--。“なでしこ5の闘将”小村美聡が示す、女性アスリートの生き方。

娘には辛い思いをさせてしまっているかもしれないけど……

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「女性アスリートの結婚後の継続率」、「女性アスリートの出産後の復職率」、「ママさんプレーヤーの推移」。こうしたテーマは「女性」や「ママさん」と言うキーワードと共に語られる。

「右膝の前十字靭帯損傷から10カ月ぶりに復帰」というニュースと「出産を経て10カ月ぶりにピッチに復帰」というニュースは同じではなく、前者はケガからの復帰として、後者はある種の女性アスリートのストーリーとして語られるのだ。

 いずれも「復帰」に違いはなく、むしろ女性の産後復帰の方がはるかに不確実な要素を含むリハビリを要すにもかかわらず、「リハビリ」というよりは「美談」、ないしはメディアの格好の話題のように扱われてしまう。「ママでも金」なんていうフレーズは確かに、引きにはなるだろう。

「子供を産んで辞めてしまう人も多いだろうし、こうしてトップカテゴリーでやっている人は少ない。それでも私がやるのは、女子フットサルが発展してほしいことももちろんあるし、結婚して出産をして、ママでも頑張れるという姿を見せることが何かにつながるかもしれないという思いがあるから」

 競技に復帰したもう一つの理由をそう話した。「女性アスリートの復帰」、「ママさんプレーヤー」という言葉が際立って伝わってしまうような世の中だからこそ、産後復帰のような状況が当たり前の出来事として捉えられる変化を望んでいる。「身の回りの環境が本当に変わるから、復帰は全然、簡単ではない」と言うが、だから競技を離れてしまったらなおさら、世の中の現状を変える動きにつながらないかもしれない。

 選手とは別にフットサルのコーチ業で生計を立てる小村は、彼女と同じようにトップカテゴリーの選手を目指してプレーする夫にも相談をする中で、もう一度、トップ選手を目指す決意を固めた。

「娘は1歳で、母親と長い期間、離れるのはいいことではないかもしれない。彼女には一番、辛い思いをさせてしまっているかもしれない。でも自分でやると決めて、家族も協力してくれているから、やらないといけないという自覚もある。だから娘も、お母さんが頑張っていることをどこかできっと感じてくれているはず。そうやって信じている思いがあるからこそ、私はこの舞台でやっていける」

 小村の言葉からにじみ出るのは、強烈な意志だ。女性だから、男性だからということではなく、1人のアスリートとしてどれだけ競技と向き合えるか。考えているのは、置かれた環境で努力と工夫をしながら、環境を変えたり、技術を向上させたり、選手としてどれだけ高みに到達できるかということに尽きるだろう。

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しんどい思いの先にある喜び

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