2018.02.11 Sun

Written by EDGE編集部

コラム

【現地記者対談】アジア最強国・イランに勝てるのか? フットサル日本代表の戦術・采配を読み解く!

吉川が4人いたら一番強い

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 あと、少しマニアックかもしれないけど、ブルーノの特徴として挙げられるのはセットの組み方だよね。

本田 アルゼンチン戦は3セット作って回しましたけど、大会では2セットを基本にして、いろいろと組み合わせを変えています。

 これは見ていてすごく感じるんだけど、ブルーノが重視しているのは、セットにおける「縦の関係」なんじゃないかと。

本田 ピヴォとフィクソ、ということですか?

 そう。1stセットは森岡薫と滝田学、2ndセットは清水和也と齋藤功一、3rdセットは渡邉知晃と皆本晃。

本田 だいたいその関係になりますね。

 うん。それで、森岡と滝田はペスカドーラ町田で、渡邉と皆本は府中アスレティックFCでの関係性と同じで、清水と齋藤はトルクメニスタンの時から一緒にやっている。お互いの信頼関係をまずは軸にしているってことかなと。

本田 サイドの選手はその時々の状況で変わっていくってことですね。

 メインの選択肢となるピヴォ当ては、2人のあうんの呼吸がものをいうところがあるし、関係性を重視してその縦のラインは組み替えないほうがいいと判断しているんじゃないかなと。

本田 世界的に見てもピヴォ当てがまだまだ全盛だし、日本もそれありきですからね。ただこのチームの場合は「横の関係」もかなり大事。例えば逸見勝利ラファエルと西谷良介はほぼ一緒にセットになっているなと。逸見がフィットし切れていない中で、味方に合わせて、特徴を引き出させることに長ける西谷に託しているところがあるなと。

 それこそバランスの問題だよね。1stセットでいえば、逸見と森岡はすごく攻撃のカラーがある選手。仮にこのセットにもう一人、室田祐希とか仁部屋和弘のような攻撃的なアラを加えたら攻撃比重になりすぎる。そこを誰で埋めるかを考えた時にハマったのが西谷だった。たぶん、経験値も、プレースタイルも、性格的なものも考慮されているよね。「俺が試合を決める」というタイプを3人も置いたらセットのバランスが崩れるから、うまくその調和を取れる選手として西谷が選ばれている。すごくブルーノらしいメンバー選考だなって思います。

本田 縦の関係もそうですけど、いろんな見方をすると、ブルーノのセットの作り方はすごく面白い。今の話にもあった森岡と逸見に、滝田と西谷をつけることでバランスを取るセットがあったり、清水、斎藤、室田の若いセットに吉川智貴を入れて勢いをつけさせたり、どのメンバーがピッチに立っているかを見るだけでもすごくメッセージ性を感じるんですよね。

 吉川自身も、齋藤、室田、清水と出る時は「自分がバランスを取らないといけない」って話しているけど、逆に皆本とかと組む時は、もっとアラの位置で仕掛けられるってことを吉川も理解しているから、選手が代わった瞬間にプレーも瞬時に切り替えられる。そういう面では吉川は本当に今のチームにとって替えが効かない存在だなって。ものすごい対応力が高いよね。

本田 吉川を長めに引っ張ることはかなりありますからね。でもどのセットになっても、どのポジションでも監督のオーダー以上のものを出せる。スペシャル・ワンですよね。

 それこそ、吉川が4人いるチームが最強かもしれないと思う(笑)。攻守の切り替えのスピード、ボールがないところでの個人戦術の引き出し、相手ボールになった時のプレスの速さ、寄せ方、全部において本当に高いレベルにある。それこそ、観戦者にとっては、吉川のプレーをずっと追い掛けて見てもらえたら、足技とかではないフットサルの面白さに気づけるんじゃないかと思います。

本田 特に、フットサルの「ディフェンスの面白さ」は吉川が教えてくれる。吉川から始まるプレスはとんでもなく強烈ですよね。例えば、スピードのある室田と一緒に入っている時は、前線から2人で相手をハメて取り切っちゃう。守備にこれほど主導権があるのかって感じられるのはフットサルならでは。それに、次々に連動していくディフェンスなんかは、吉川が他の選手を引っ張り上げているなって思います。

 吉川の守備は、守備じゃない。

本田 というと?

 ほぼ攻撃だと思うんだよね。相手のボールに対してアタックするところでは、すでに攻撃の第一歩になっている。それこそが、今の日本に足りないところであって、世界基準で見た時に差となっているなと。「吉川が4人いたら一番強い」っていうのは、守備の局面で常にイニシアチブを握って奪いにいける、そこから攻めて行けるから。吉川が日本の基準となっていくべきだと改めて思いますね。

本田 吉川の水準の高さはあるとして、ただ全体としても、今の選手たちはそれぞれの役割を理解して、特徴を出し切れていますよね。

 経験を積んできた選手が多いからこそ、ピッチ内で求められている役割を理解して表現する能力は高いよね。

本田 その代表的な選手は星ですよね。

 そう。星は、今大会に関しては使われ方を見ても主役じゃないよね。どちらかといえば、便利屋になっている。でも、代表だけではなくて、浦安でのいろんな経験の中で、自分にどんな役割が求められているかを考え続けてきたことが蓄積されてきた。グループがうまくいくためにどうすべきかを考えているし、みんなが主役になればいいというところで、与えられたミッションを遂行できるのはすごく立派だなと。

本田 星自身も「チームが勝つことが一番」ってことは特に今、すごく大事にしていますね。でもその感覚って、星が今、ピッチ外で会社を経営しているからこそ得られる視点もあるんじゃないかと思います。北原亘さんに言わせると、「フットサルは超高速でPDCAサイクルを回せるスポーツ」ってことなんですけど、フットサルをビジネスに置き換えられるあたりは、星もすごくリンクするなと。仮説を立ててピッチに入って、プレーをして出た課題や気づきをベンチに持ち帰って、修正ポイントや改善策を話し合ってからまたピッチでトライしていく。だから、試合をしながら社長業をこなしているみたいな印象を受ける。

 そういうカードを持っていることはブルーノにとってはすごく大きいだろうね。ケガで離脱した時期も長かったし、絶対的な力でエース的なポジションに立ち続けることはできなかったけど、それでも監督に呼ばれている。ブルーノが「星はどこでもできる選手だ」って話しているけど、信頼の表れだよね。

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決勝で関口のサプライズ起用も?

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