2018.02.11 Sun

Written by EDGE編集部

コラム

【現地記者対談】アジア最強国・イランに勝てるのか? フットサル日本代表の戦術・采配を読み解く!

写真:本田好伸

AFCフットサル選手権チャイニーズ・タイペイ2018を戦う日本代表は、本日2月11日(日)、イラン代表との決勝戦に臨む。日本はグループステージからここまでの5試合で順調に勝利を重ね、2016年にベスト8で敗退してW杯の出場権も逃した前回大会の“雪辱の舞台”までたどり着いた。泣いても笑っても、あと1試合。日本は、圧倒的な強さで勝ち上がってきたイランに勝てるのか。試合の焦点はどこなのか。現地で取材中の北健一郎と本田好伸が、決勝直前の今、この最重要マッチを読み解く。決勝戦は日本時間20時キックオフ。日本でもNHK BS1での生中継があるので、この対談を読んで、日本を応援しよう!
(構成・北健一郎&本田好伸)

日本代表の攻撃にはパターンがある?

HND_1361

本田 アジア選手権もいよいよ決勝です。ここまで見てきて日本は強いですか?

 実際のところはなんとも言えないです。だって、相手が強くなかったから……。

本田 確かに日本が強いのか弱いのか、その判断は難しいですね。

 組み合わせに恵まれたところは大きい。選手は「どんな相手でも油断はできない」と言いますし、2016年大会は(格下と思われていた)ベトナムにやられた苦い経験もあるから、口が裂けても「楽勝です」とは言えないけど、準々決勝のバーレーン、準決勝のイラクと日本とでは、正直かなり実力差があった。決勝には行くべくして行ったという印象はありますね。

本田 正直、グループステージもそこまでギアを入れていない感じで、相手に合わせながら戦って最後に帳尻を合わせて勝っている印象でした。

 アジア選手権は今までもそうだったし、ノックアウトステージからが本番という感じはありますけどね。でも、そこで苦戦してきたほうが意外と結果が出ていることもあったから、その意味では2試合目の韓国戦でシーソーゲームになった展開は日本にとってはよかったのかなと。

本田 あの試合からこのままじゃまずいぞっていう危機感が生まれたと思いますね。ただ、メンバー的には2年前もそれ以前も経験している選手が多い。

 それこそ新しく入ったのは37歳のイゴールと、左利きの齋藤功一くらいだからね。

本田 でも監督はミゲル・ロドリゴからブルーノ・ガルシアに代わりました。それで言うと、準々決勝、準決勝の2試合は、日本がやりたいことをできて、日本のカラーを出せていましたよね。アグレッシブに奪いにいくところとか、規律があるところ。それに、どんなセットであっても、お互いの特徴をちゃんと把握してやれてきているなと。

 ただまあ、ミゲルジャパンからやっているから、これくらいはできて当然という感じもしますけどね。

本田 ミゲルとブルーノの違いを何か感じますか?

 ブルーノのほうが真面目で、きっちりやってきていると思います。ミゲルはどちらかと言えばエンターテイナーでした。日頃の言動もそうだし、2012年のワールドカップでカズさん(三浦知良)を入れて臨んだのも、彼のアイデアから始まっていたわけだしね。一方でブルーノは、恐らくそういうことをするタイプじゃなくて、ToDoリストを作って、一つひとつ仕事をこなしていくイメージ。でもブルーノのここまでの仕事ぶりはすごく評価できます。

本田 堅実にやってきているところですか?

 ちゃんとプロセスを踏んでチームを作れる人だなと感じるところですかね。今回のメンバーが、前回からガラッと変わることはなくて、その意味では保守的だとか、安パイだと言う意見があるかもしれないけど、目標達成のための最適解を考えてのことですからね。現状の日本の選手層を見た時に、アジアの舞台で早い段階で負けるわけにはいかないからこそ、使えるタレントを残した。加えて、去年8月のトルクメニスタンでのアジアインドアゲームズで見つけた25歳以下の選手をしっかりと組み込みながら戦っている。現実的だけど信頼できますよね。

本田 それは、ミゲルが築いてきたベースがしっかりとあるという意味でもありますよね。ミゲルが率いた7年弱の間でスペイン流のフットサルがすでにインストールされたからこそ、あとはその中から何を引き出して使うかというマイナーチェンジ。

 ゼロベースで植え付けていく必要がない分、やりやすいはずだよね。大会前のアルゼンチンとの親善試合の後に、皆本晃に「攻撃の形が構築できていないのでは?」って問い掛けたら「ブルーノ監督のほうが攻撃のオーガナイズは細かく決められている」と。W杯の優勝チームを相手にはまだそこを出す力がなかったということであって、実際は確かに構築されている。今大会で、ブルーノジャパンの攻撃が驚くべきほどパターン化されている部分が見えてきましたから。

本田 サインプレーでスタートする、みたいなことですか?

 例えば3-1の形であれば、真ん中の選手がサイドに出してからどう動くのか。基本は同サイドのラインと平行に縦に走るパラレラか、中央から逆サイドに方向転換するジャゴナウの2つがあって、その動きがスイッチとなって他の選手がポジションを変える。そこで空いたスペースに走るフリーの選手にパスを出すことを徹底して狙っていますよね。

本田 確かに、今のチームには森岡薫、清水和也、渡邉知晃、それに星翔太と4人のピヴォがいて、彼らを活用するピヴォ当てがメインではあるんですけど、いきなり当てるというよりかは、そのスイッチを受けて狙っているような印象はあります。

 もう一つは両サイドに2人が開いて、高い位置に他の2人がポジショニングする2-2のような形があって、片方のサイドに引っ張っておいてから逆サイドで意図的な1対1を作り出すアイソレーションでドリブル突破を狙うシンプルなやり方。これを徹底的に繰り返しているなと。

本田 食い付いてきたら逆サイドに振ってサイドで孤立させる形は、特にバーレーンやイラクのようにサイドで挟みにくる相手にすごくハマりましたよね。

 ただ攻撃パターンを決めるということには裏の狙いがあると思うんです。

本田 裏の狙い?

 そう。攻撃だから点を取りにいくわけだけど、すべてが点につながるわけじゃないし、失敗や技術的なミスから相手にボールを奪われることはたくさんある。でも、パターン化されていると、奪われることも予測できるんです。相手にボールを奪われて攻守が入れ替わるネガティブ・トランジションの場面で、コンマ何秒かもしれないけどいち早く守備のスイッチに切り替えてアクションを起こせる。バーレーンとイラクというカウンターが得意なチームを相手に無失点だったことは、そこにも理由があるはず。ブルーノが「攻撃の終わらせ方」をちゃんと決めているということだと思います。

本田 なるほど。「終わらせ方」って、よく言われるのは「シュートを打って終わろう」とかですけど、「どこで失う可能性があるのか」を予測できるような攻撃のパターンを持っていることは、必然的に守備への一歩は早くなりますね。

 ミゲルの場合は、選手の判断をすごく大事にする監督だったし、それだけ選手を信頼していたとも言えるけど、ボールを失った後にどうするのかがチーム内で共有し切れなかった。だからカウンターから失点を重ねてしまうケースは非常に多かったんですよね。ブルーノは、そんなミゲルジャパンを倒したベトナム代表の監督だったわけだから、日本の弱点をよく理解している。カウンターに対するもろさをきっちりと修正していますね。

本田 ブルーノはリスクマネージメントを第一に考えているってことですね。準決勝なんかはすごくリスクを避けて攻め続けていた。監督も「バランスを意識してセットを組んでいる」って話していたけど、どこでリスクを描けるかも含めて、今の代表の特徴的な部分かなと。

<次ページ>
吉川が4人いたら一番強い

1 2 3 4

◀︎前の記事 トップ ▶︎次の記事