2017.03.31 Fri

Written by EDGE編集部

コラム

サッカーに必ず生きる“フットサルのDNA”とは何か。元日本代表監督ミゲル・ロドリゴの“凱旋”講習会レポート

写真:本田好伸

3月30日(木)、元フットサル日本代表監督(現フットサルタイ代表監督)のミゲル・ロドリゴ氏による講習会が東京都港区の『For you studio』で開催された。ミゲル氏が日本で提唱し続けてきた「フットサルはサッカーに役立つ」という考えに基づき、「育成年代からフットサルをすることで日本のフットボールは強くなる」ということに焦点を当てた今回のイベント。サッカー選手を目指す子供であっても、なぜフットサルをしておくべきなのか。また、フットボール大国や世界のトップ選手は、サッカーのピッチでどのようにフットサルを生かしているのか。優れた日本人フットボーラーを輩出するための「フットサルの有用性」が、改めて示された。
(取材・文 本田好伸)

サッカーのコンセプトのほぼ100パーセントがフットサルのもの

 3月30日(木)、元フットサル日本代表監督(現フットサルタイ代表監督)のミゲル・ロドリゴ氏による講習会が東京都港区の『For you studio』で開催された。シュライカー大阪の木暮賢一郎監督による講習会の翌日、2夜連続の開催となったFUTSAL EDGE主催の「FUTSAL EDGE ACADEMY」。会場には50名を超える参加者が集まり、世界最高峰のトレーニングメソッドを持つスペイン人監督の言葉に耳を傾けた。

「サッカーの育成年代におけるフットサルの正しい導入方法」と題した今回の講習会。最大のテーマは、「優れた日本人フットボール選手を、いかにして生み出していくのか」ということ。その方法論の一つこそが「育成年代からフットサルをすること」であり、それを証明する明確な根拠を示していくという意味で、「フットサルがどのようにサッカーに役立つのか」に焦点を当てた内容となった。

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 ミゲルは、2009年〜2016年まで日本代表監督に就いた7年間の在任期間で、育成年代のフットサル導入にも尽力してきた。それは単に、フットサル選手の育成ということではなく、子供たちが将来、サッカーかフットサルのいずれかの道を選んで進むとしても、フットボールの入口としてフットサルがあるべきだということ。そこで得られるフットボールスキルこそが両競技に共通するものであり、スペインやブラジルといったフットボール大国では当然のように実践されてきたものだと伝え続けてきた。

 日本でも近年、サッカーのレベルアップのためのフットサルの重要性が語られるようになり、育成年代からフットサルをプレーする子供たちも増えている。育成年代を対象にした公式、民間フットサル大会も多い。しかし一方で、正しい導入方法が確立されていないために、子供たちがやっているフットサルが、本来の目的から掛け離れている場合も少なくない。フットサルコートで開かれているサッカースクールで、「サッカーボール」が使用されている例もある。狭いコートでよく弾むボールを使っているためにコントロールが難しくなり、何度もタッチラインを割ってしまう。「フットサルは1分間でサッカーの6倍のボールコンタクト率がある」ために、より多くの学びの機会を得られるはずが逆に、ボールコントロールもパスもドリブルも習得できなくなる。

 さらに、プロジェクターを使って例示された映像では、ピッチ上で子供が前線にボールを蹴り合う、もしくはゴレイロが投げ合う展開が続いていた。狭いコートのなかで相手とのコンタクトがあり、途切れることのない攻守の連続があるために、技術や戦術、自ら考えて決断すること、視野を保つことなどあらゆる感覚を養えるというフットサルのメリットが、損なわれてしまう。「ゴールデンエイジはすべてを最も吸収する時期。脳が活発でスポンジのように学べる」という大事な成長期に、その機会を逸してしまっているのだ。

 こうした日本の現状を変えていくためにも、ミゲル氏は今回のイベントを通して、改めてフットサルとサッカーが密接にリンクするものだということを示していった。サッカーにおける様々なシーン、例えばシュートやアシスト、パス、ドリブル、テクニック、キック、フェイント、オフェンスシステム、ディフェンスシステム、セットプレー、ゴールキーパー、ボール回し、プレッシング、プレーの読み、集中力、リスクの感覚など。ミゲル氏は、「サッカーのコンセプトのほぼ100パーセントがフットサルのもの」とまで語っている。つまり、サッカーのほとんどの局面においてフットサルが生きるということだろう。

 例えばロナウジーニョは、「僕のすべてはフットサルで学んだ」と語ったことがあるように、実際に、ネイマールやロナウド、ロナウジーニョ、イニエスタ、マルセロ、エデン・アザール……他にも欧州や南米の多くのトップレベルの選手は、育成年代にフットサルをしてきた原点がある。ミゲル氏も、15歳までフットサルをメインにしてきたネイマールのプレーを目の当たりにするたびに、「フットサル選手にしか見えない」、「フットサル選手がサッカーをしているように感じる」という。それに、スペインのリーガ・エスパニョーラの試合実況でも度々、バルセロナの目まぐるしくパスが回る展開を目撃した解説者が、「まるでフットサルの試合を見ているようだ」と称賛することもある。つまり、それくらいフットサルがサッカーに生かされているということに違いない。

 現在、イングランドのプレミアリーグ、マンチェスター・シティで指揮を執っているジョゼップ・グアルディオラ監督といった世界的な名将もまた、バルセロナの監督時代には、フットサルのコンセプトを生かしたシステムを構築してリーガに君臨したことがある。フットサルの戦略、戦術、技術、考え方などのあらゆる要素が、サッカーのあらゆる場面で生きている。だからこそミゲル氏は、育成年代からフットサルをすべるきだと伝え続け、「フットサルのDNAこそが、いずれサッカーに役立つ」と語ってきた。

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 今回の講習会には、日頃から育成年代に携わるサッカー指導者も多く参加していた。ミゲル氏の発する一言一句に対して熱心に聞き入っている姿を見れば、その思いが届いていることは明らかだった。そうなると、次に考えるべきは、「どのようにフットサルを導入するのか」ということだろう。ミゲル氏はそうした疑問に答えるための手段の一つとして、先日、フウガドールすみだの稲葉洸太郎がテクニカルディレクターを務めるフットサルスキルアップスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のメソッドプロデューサーに就任した。

 ミゲル氏が指導者として重要視しているのは、考えながらより実戦的にこなすことができる「インテグラルトレーニング」。より試合の局面に即した形で、技術や戦術、フィジカル、メンタルの要素が入ったこのトレーニングこそがフットサルに凝縮されているために、優れたサッカー選手の育成にも大きな手助けとなる。そうしたノウハウを出し惜しみなく構築したオリジナルのトレーニングメニューをベースに、サッカーをしている幼稚園から大学生までに「スモールフットボール」のスキルを提供していく。

 「子供の成長は、彼ら自身の手の中にある」。ただし、その成長を促すために、どのようにフットボールを導入していくのかは、親や指導者の役割である。「フットサルからサッカーへ」、もしくは「フットサルからフットサルへ」。フットボールのスタート地点に「フットサル」がある日本の文化を築いていくために──。ミゲル氏は、日本を離れた今もなお、優れた選手を育成し、日本フットボールが強くなることを願い、活動を続けている。

<ミゲル氏がメソッド・プロデューサーを務めるプロジェクトはこちら>
POTENCIA(ポテンシア)

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