2016.08.22 Mon

Written by EDGE編集部

コラム

“投げ合い”から”蹴り合い”へーーポートボール化するバーモントカップ。このままで子どもたちは成長できるのか?

勝ち方ではなく、戦う術とメッセージを子どもたちに

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 そして、そうした信念を胸に出場しているチームがいるという意味で、希望はある。例えば、前回大会で優勝したブリンカールFC(愛知県)もその一つだ。古居俊平監督は、「僕のなかでは、プロセスさえ良ければ、絶対に結果が付いてくるという思いがある。良いトレーニングをして、みんなでイメージを共有して緻密にやっていけば、相手がどんなにやってきているチームでも勝てないことはない」という考えのもとでチームを築き、毎年この舞台に勝ち上がってきている。

 ブリンカールの選手は日頃から別々のクラブでサッカーをしているが、5年生でチームを作ってフットサルのトレーニングを行い、その集大成としてバーモントカップに出場している。監督は2年間で、いかに狭いコートでの技術を高め、選手同士がイメージを共有しながら、判断と決断を繰り返してボールをつなぎ、連動してスペースを突いて相手を崩していくという緻密な戦い方を落とし込むためのトレーニングをオーガナイズしている。まさに、サッカーに生かすためのフットサルを追究するクラブだと言える。

 そうやってトレーニングを積んだ選手たちは、相手の状況を見ながらプレーし、個々に判断を繰り返し、グループのなかでいかに個を生かすのかという戦いを意識している。GKを使ったプレス回避や押し上げ、セットプレーなど、Fリーグでも見られるようなプレーを随所に発揮している。ただ、優勝候補に推された今大会も順当に1次ラウンドを通過したものの、準々決勝ではメンタルのもろさを見せた。2点を先行してなおも攻め込みながら3点目を奪えず、逆にセットプレーから失点して2-4で逆転負け。最後までチャンスを作りながらゴールが遠く、不完全燃焼で大会を後にした。

 その他にも、全国の常連であるマルバ千葉fc U-12や、決勝に勝ち残ったエスピーダ旭川も可能性を見せた。特にエスピーダは、日頃からフットサルのトレーニングをすることはないが、中川鉄平監督は「この年代の一番の目的は個の育成。(ゴール前に)放り込むことで一時的に点数が入ったり勝てたりするかもしれないが、それはうまくなる機会や成長する機会を逃してしまっているかもしれない。うちはみんなでボールを大事にして主導権を握りながら戦うというコンセプトを貫きたい」と話していた。その言葉通り、登録したフィールドプレーヤー8人を2セットで回し、選手個々がしっかりとゴールを意識しながらパスやドリブル、3人目の動きで相手の守備をこじ開け、勝利を目指して戦い続けた。

 逆に、ブリンカール以上に不完全燃焼だったのが、マリオフットサルスクール(静岡県)。選手たちは決して体格に優れているわけではないが、日頃からフットサルを専門にトレーニングして、猛者ぞろいの東海地域で常に上位争いをしている。それでも今大会は、全国の舞台で自陣の深い位置からつないでいく本来の戦いをほとんど見せられなかった。相手のプレッシャーを回避することができず、むやみに蹴り込み、先に述べたサッカークラブのような戦いに終始。かろうじて決勝ラウンドに上がったが、センアーノ神戸に驚きやフットサルならではの刺激を与えられないまま敗退した。

 結局、これが現状である。「心技体」でいう、戦術や引き出しなどの「技」に秀でるフットサルクラブの「心技体」すべてがそろった状態でようやく、フィジカルやパワーなどの「体」だけで勝負するサッカークラブと競り合える力関係。だからこそ、それで勝ててしまうサッカークラブが「サッカーの技」と「体」で押し切り、フットサルからサッカーに生きるものを獲得しないまま大会を後にしているのだ。

 しかしいったい、すべてのクラブがフットサルの重要性を本当の意味で理解し、今大会に出場する意味を考える日が訪れるのだろうか。「どうやって勝つのか」ではなく、「どうやって戦い、子どもたちに何を伝え、学んでもらいたいのか」と指導者がビジョンを示していかなければ、ポートボール化の流れは止まらないだろう。果たしてこの先、バーモントカップはどこに向かっていくのか——。

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