2016.08.22 Mon

Written by EDGE編集部

コラム

“投げ合い”から”蹴り合い”へーーポートボール化するバーモントカップ。このままで子どもたちは成長できるのか?

指導者がフットサルを知らなすぎる

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 これは決勝に限ったことではない。大会を通して、多くのチームが前線へのロングボールに頼った戦いを繰り広げた。さらに今年に限った話でもなく、毎年のようにそうしたチームが出場し、そして勝ち上がっていく。フィジカルやパワー、キックこそが今大会における必須能力であるかのように、こうした傾向が大会毎に強まっている。ただ、競技性を無視するような戦いを抑止する動きは、以前にもあった。

 2011年1月に開催された第20回大会から、GKからのボールはクリアランスでもインプレーでもすべてハーフウェーラインを超えてはいけないという現行ルールへ改正された。それ以前はGKの“投げ合い”を防ぐためにスローのみがハーフウェーラインを超えてはいけないという規定だったが、GKのパントキック1本で相手ゴールまで蹴り込む場面が増え、今度は“蹴り合い”が横行するようになったことで、現在のルール改正に至った。

 それからしばらく、味方との連係から相手を崩すことを狙うチームも増えたが、それも束の間、気が付けば今度は、GKからのボールを受けた自陣の選手が、ダイレクトでゴール前に蹴り込む場面が増えていく。蹴り込まないにしても、そもそもGKからのスローでハーフウェーラインのギリギリの位置にフワリと上手投げされたボールが送られることも多い。キックインも同様にただひたすら蹴り込むプレーが続いていたため、今大会を見た元Fリーグの選手が「ポートボール化している」と嘆いたほどだった。

 こうしたプレーが増える理由はいくつか考えられる。

 一つは、ピッチサイズ。大会の競技会規定には、ピッチサイズは原則として32メートル×16メートルとあるが、これが狭すぎるというフットサル指導者からの指摘もある。特に横幅16メートルは想像以上にスペースが限られ、相手DFが圧倒的に有利となる。そのため、自陣の深い位置でボールを奪われるリスクを回避するために、できるだけ早く前方にボールを運んでしまおうと考えるのも仕方がない。

 ただ、あまりにも考えなく蹴り出しているように思う。たとえ目の前に相手がいたとしても、全くコースがなかったとしても、前方に味方がいなかったとしても、すぐ近くにフリーになっている味方がいたとしても、もはや周囲の状況は見えていない。結局、むやみに相手にボールを渡し、ゴールを奪われてしまう。こうした脈絡のない展開から次々にゴールが生まれ、結果的に“ダイナミック風”な試合展開となり、両チームで10点以上が生まれる“激しい乱打戦的”なスコアで決着することになってしまうのだ。

 そしてもう一つの重大な理由は、指導者がフットサルを知らなすぎること。相手の状況を見極め、ボールを動かしながら味方もスペースに動き、数的有利を作るためにそのスペースを使うのか、もしくは別の選択肢を取るのかを選手が判断し、決断していく連続によって、全員がイメージを共有しながらゴールに迫る。この一連のプロセスこそ、フットサルの醍醐味だ。そこで起きる攻守の現象や駆け引きを理解せず、選手に教える術もないために、選手が選択肢を持たないままプレーすることになってしまう。

 さらに残念なのは、選手個々の技術自体は非常に優れているということ。決勝に進出したどちらのチームにも言えることだが、ドリブルやパス、シュートなどの基礎技術は本当に精度が高かった。また選手によっては、ボールがないときにも間を取れるように動いて顔を出すなど、相手や味方を見ながら、しっかりとスペースを意識してプレーする選手もいた。それにも関わらず、全員の選択肢として共有されていないために、結局はフリーの味方やスペースがあっても使えず、何度も同じようなプレーを続けてしまう。選手があと少しでも選択肢を持てていれば……と思うシーンが何度もあった。

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フットボールの原理原則を無視して選手の成長はない

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