2016.01.22 Fri

Written by EDGE編集部

コラム

関東フットサル三国志/第9章「その10:1799人を集めたカスカベウvsプレデターの優勝決定戦」

Fリーグができるまで、日本フットサルの頂点は間違いなく「関東」だった。その関東を軸に競技フットサルの歴史を振り返っていく当連載。昔からのファンはもちろん、フットサル観戦ビギナーや、Fリーグ以降にファンになった人には「最高の教科書」になるはずだ。
(文・木暮知彦/関東フットサルリーグ広報委員)

 全日本選手権のわずか1週間前、2006年1月21日、関東リーグ上位リーグの最終節が、駒沢屋内球技場で行われた。最終試合のカスカベウ対プレデターの優勝がかかった大一番の観客数は1799人。これは、関東リーグ始まって以来の最高観客動員数となり、このシーズンが栄華期の頂点であることの証明となった。

 最終試合の前のボツワナ対フトゥーロが1481人、ファイルフォックス対ブラックショーツが1598人であるから、延べで4847人、平均で1626人の観客を集めたことになる。無料であり、場所がアクセスの良い駒沢屋内球技場とはいえ、学校や企業などなんの後ろ盾もないインドアスポーツにこれだけの観客が集まるとは、2000年3月に始まった第1回の関東リーグの頃には想像もつかなかったに違いない。何せ、その頃は観客といえば、次の試合を待っているチームの選手か、戦っているチームの家族、友達くらいのものであった。

 さて、試合の方であるが、第1試合のボツワナ対フトゥーロ戦はすでにお互い優勝の目はもうなくなっていたが、ボツワナにとっては3位を賭ける戦いとなった。3位に入れば、地域チャンピオンズリーグに出場できる。結果は、9-6とボツワナの勝利で暫定3位、次の試合のファイルフォックスの結果待ちとなった。

 第2試合のファイルフォックス対ブラックショーツ、ファイルフォックスにとっては、勝ち点でボツワナに2差をつけられたため、勝たなければ地域チャンピオンズリーグ進出の目はない。すでに選手権は都予選敗退、関東リーグの優勝の目はなくなっているから、ここで負けると昨年の3冠から一気に無冠になってしまう。

 しかし、結果は、ブラックショーツの山田将貴(のちにバルドラール浦安)に全得点のハットトリックを決められ、2-3で敗戦、今シーズンは無冠に終わるのであった。一方、ボツワナは初の地域チャンピオンズリーグ出場の切符を手に入れ、新旧交代の匂いを感じさせた。

 ちなみにハットトリックを決めた山田は、神奈川県1部リーグのカナベーにいた選手で、柔らかなボールタッチのテクニシャン神奈川に山田ありと有名であった。また、山田には双子の弟がいて、同じくテクニシャンで双子の兄弟がいるカナベーとして注目された。当時の監督は、湘南ベルマーレの監督を務めた小野直樹である。山田は、カナベーが関東リーグ参入を逃したこともあって、さらに上を目指すべく今シーズンよりブラックショーツでプレーするようになった。実際、来月に行われた日本代表のマカオ遠征メンバーに初選出、Fリーグができてからはバルドラール浦安に移籍するなど、飛躍していくのであった。

 いよいよ最終試合のカスカベウ対プレデター戦は、ここまでカスカベウが勝ち点36、プレデターが勝ち点34、プレデターは勝たなければ優勝はないという試合であった。プレデターにとっては、2000年の第1回関東リーグでガロと同時優勝以来、5年ぶりの大チャンスである。長年、通年リーグ実現に努めてきた塩谷にとっては、通年リーグでの優勝はどうしても欲しいタイトルだったことであろう。

 人気のカスカベウと復興著しいプレデターの優勝をかけた一戦、満員の駒沢屋内球技場はいやがうえでもボルテージは上がった。しかも、プレデターには今シーズンから強力な応援団がサポートしていた。今まで、プレデターは、どちらかというとシャークス、カスカベウ、ファイルフォックスなどに比べると遅れをとっていたサポーター組織であったが、戦況にあわせた数種類数のコールパターン、チームの象徴であるプレデターの蝶をあしらったゲームフラッグを掲げるなどJリーグなみの応援が会場を盛り上げた。当時の「フットサルラジオ」の記事によれば、コーチの北野に頼まれて、Jリーグのサポーターだった森匡人が応援団を組織したのだという。森もフットサルに魅せられていくのだった。

 結果の方は、前半は、2-0でカスカベウが有利に試合を進める。後半も残り3分まで4-1でカスカベウがリード、このまま押し切るかに見えた。しかし、ここからプレデターが意地を見せる。江藤、相根、高橋が決めて、ついに残り19秒で、4-5の1点差に詰め寄る。そして、残り8秒、5ファウルでプレデターは第2PKのチャンスを得る。蹴るのは江藤、しかし、枠を外してしまい、万事休す。残り3秒のドラマには至らず、カスカベウが3年ぶりの王座奪還を果たすのだった。

 こうして、栄華期の絶頂の第7回関東リーグはカスカベウの2度目の優勝で幕を閉じた。全国リーグが始まる最後の第8回関東リーグはファイルフォックスが優勝したから、絶頂期を両雄が制して全国リーグにバトンタッチしたことになると考えると興味深いものがある。一方、敗れたプレデターそして監督の塩谷は1週間後に控えた選手権に照準を切り替えるのだった。

 さて、お宝写真は、激選の第7回大会のベスト5にしよう。この写真は、4月に入ってから発刊されたフリーペーパー「関東フットサルリーグプレス」の表紙である。発行元は関東リーグそのもので、広告を集め資金調達し、関東近辺のフットサル施設に置いた。全国リーグに先駆け、フットサルリーグの認知度を高めようとしたものである。写真は、左から稲田祐介、松原君守、金山友紀の優勝カスカベウのトリオ、下がって左の準優勝プレデター岩本昌樹、6位フトゥーロ渡辺英朗である。

 稲田は得点王、金山は得点2位でこの2人でカスカベウの半分の得点を稼いでの受賞である。GK松原は、安定した守備を見せ、ディフェンスで優勝に貢献した。プレデターの岩本は、チームが苦しいときにサイドからのスピードあるドリブル突破から1人で局面を打開できる点が評価された。フトゥーロ渡辺はそのテクニックで会場を沸かせ、金山と並んで2位の得点を挙げた。いずれも、激戦にふさわしいベスト5であった。

※この連載は毎週水曜日・金曜日の2回更新予定です。

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