2015.11.19 Thu

Written by ROOTS

コラム

ナショナルチームの“多国籍化”を見て思うこと。外国出身選手はなぜ、日の丸を背負って戦うのか

「もし日本代表になれたら、全身全霊でプレーする」(イゴール)

 酒井と同じような思いを持って日本人になることを選んだブラジル人がいる。ペスカドーラ町田の守護神、イゴールだ。彼は現在も帰化申請中だが、許可が下りれば、酒井と同様に日本代表に選ばれる可能性がある。それでもイゴール自身は、「日本代表になるためだけに、日本国籍を取得しようとしているのではない」と話している。イゴールの胸中には、「日本に永住して、子どもを作って、家族と一緒にこの国に住みたい」という強い思いが第一にある。

 彼らはなぜそこまで日本に愛着を持っているのだろうか。特にイゴールは、酒井とは違って日系ブラジル人ではないにも関わらず、だ。「来日した際に、最初に受け入れてくれた印象がすごくよくて、今でもありがたい気持ちを感じている。それに日本は、学校も行政も、公共機関もしっかりしているし、生活していく上ですべてが整備されている。将来、子どもができたときに、安心して育てていくことができるし、彼らに明るい未来を見せることができる。今のブラジルでは子どもが何の苦労もせず、危ない目にも遭わないで育っていけるかどうかというのは簡単なことではない。日本のように、しっかりとした教育を受けられて、頑張ればそれなりの成果を得られる社会ではない」

 当然、ブラジルには親や兄弟、友人がいる。それでも帰国ではなく、日本での永住を選択した一番の理由は、「家族との生活」にあった。現在、イゴールには一緒に暮している日本国籍を持つフィアンセがいるが、まだ籍は入れていないという。(それこそプラスアルファとして)打算的に籍を入れてしまえば、帰化への道が早まるかもしれない。でもそれをしないのは、イゴールの人柄に他ならない。「帰化を理由に結婚するのは嫌だから。そうではないと彼女が分かってくれたとしても、周囲にはそう思う人がいるかもしれない」。どこまでも真面目な人物なのだ。

 話を元に戻すが、酒井にしろイゴールにしろ、彼らにとっての日本代表は、あくまでも日本人として生活する過程にあるものでしかない。それに、イゴールの言葉を聞いて感じることがある。「日本国籍を取得して、そのまま日本代表になれるわけじゃない。呼んでもらえるように、もっともっと頑張らないといけないし、今のままではまだ足りないと思っている。でも国を背負って世界と戦うのは本当に大きなことだし、もし日本代表になれたら、全身全霊でプレーする」。そこにある思いは、日本人と何ら変わらないのではないかということだ。

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 最初に、「なぜ日の丸を背負って戦うのか」と書いたが、それを競技のトップの舞台で戦う日本人に問うのはあまりにも失礼な、聞くまでもないことだろう。つまりそういうことだ。日本人として国を背負って戦うことは誇りであるだろうし、想像を絶するような喜びがあるはずだ。それと同じように、帰化を望む外国籍選手、あるいは帰化した選手は、日本人として生活して、その延長線上にある日本代表で戦うことに、何の疑問も持っていないのではないだろうか。

 「ワールドカップで優勝する気持ちで戦っていく」(酒井)と、当然のように日本代表としてのプライドと高い目標を持ち、他の日本人選手に勝るとも劣らない気持ちでプレーを続けていくのだろう。

記事提供元
ROOTS
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