2015.11.08 Sun

Written by EDGE編集部

Fリーグ

【インタビュー】湘南・久光重貴の今。「限られた時間の中で、100%でやり続けたい」

写真:北健一郎

湘南ベルマーレ・久光重貴、34歳。2年前に「肺がん」であることを公表し、がんの治療をしながらも、Fリーグの選手としてプレーを続けてきた。久光は言う。「僕に残された時間は多くない」。でも、だからこそ、想像を絶する努力をし、ピッチに立てば一つ一つのプレーに魂を込める。過去でも未来でもなく“今”を全力で生きる。その姿に、人々は胸を打たれるのだ。
(文・北健一郎/futsalEDGE編集長)

フットサルを諦めたら、そこで終わり

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——10月18日に行われたFリーグ第24節・エスポラーダ北海道戦で今シーズン初出場を果たしました。

Fリーグのメディカルチェックを通って、選手登録されたのが7月8日でした。そのときはまだ抗がん剤治療中だったので、すぐに試合に出場することはできなかったんです。ただ、7月8日は自分の誕生日で、もう一つは2年前の7月10日から治療を始めていたので、そのあたりは自分の中で大きな意味があるんです。7月1日に本(がんでもプレーを続ける元日本代表 久光重貴 笑顔のパス/ガイドワークス)が発売されて、みなさんからの応援のメッセージや頑張ってくださいという言葉をもらえたタイミングでもありました。抗がん剤の中でも、一番きついと言われるものをやっていたので、そのときはもう吐き気もそうだし、普通に生活することもしんどいぐらいでした。

——その状態から、10月の試合に出るまで、どれだけの、どういう努力をすれば、Fリーグのピッチに立てるのか、想像もつきません。

しんどかった時期もそうなんですけど、一番初めに肺がんだってことを告白した時期に、今でも忘れないんですけど、本当にいろいろな人が応援してくれて、声をかけてくれて。こんなにも自分の知らない人が応援してくれるんだっていう喜びと、そこに対して、絶対見せてやるっていう気持ちになって。

——しんどい時期だったけど、ちょうど本が出たりとか、選手登録もされた中で、改めて気持ちを奮い立たせた時期でもあった。

「できないかもしれない」っていう弱気になっていた自分もいた中で、自分が強かったわけではなく、本当に周りの人に強くしてもらったなと思います。じゃあ今できることってなんだろうって思った時に、病院で筋トレを始めたんです。

——病院で筋トレする人ってあんまりいないですよね(笑)。

そうですね(笑)。

——チームでトレーニングを始めたのはいつからだったんですか?

退院していた期間では、ちょこちょこ顔を出していたんです。でもまだボール蹴ったりとかはできるレベルじゃなかったし、一番の目的は怪我をしないことでした。

——怪我をしないこと。

肉離れだったり、筋肉系の怪我をしてしまったら、プレーできなくなってしまう。まずは「怪我をしない体を作る」というベースにしっかりと目を向けて。体の中の調子だったり、抗がん剤や検査のためにステロイドを打つ中で、そこに対しての副作用っていうのは、諦めるしかないなって。それをやらなければならない状況に今はあって、でも、それをやったからといって諦めたくないなという気持ちでしたね。

——フットサルをプレーすることを諦めたくない?

それを諦めてしまったら、何にもできなくなっちゃうので。自分が今まで一生懸命向き合ってきたスポーツに対しても目を背けるようだったら、じゃあ次に何をやるんだろう、その次に自分が一生懸命やってきたことってなんだろうってなっちゃうんです。でも、一生懸命やってきたことだからこそ、妥協しなければいけないこともあるかもしれないけど、もしかしたらできることころがあるんじゃないかなっていう、すごい小さな可能性かもしれないけど、その可能性を見つける努力をしています。

——湘南のフィジカルコーチの府川さんと話したんですけど、久光さんのことをがん患者としては見てないと。本当に一人の選手として、どうコンディションを作っていこうかっていうことを、密にコミュニケーションと取り合ってやっているのが印象的でした。

直接顔を会わせないときでも、いつも連絡をとっています。正直な話、僕の体がどうなるかは、自分でもわからないし、病院の先生もわからないし、府川くんもわからない。でも、一つだけ言えるのは、できるときとできないときっていうのは、もう分かりやすいので、できるときにじゃあ何をするか。できないときに下を向くんじゃなくて、そこはもう諦めて、その中で何をするか。ただ、僕はどうしても追い込もうとしてしまうので、府川くんがストップをかけてくれたり、休養をすすめてもらったりすることで、コンディションを作ってくれています。

——ストイックな性格ゆえに、練習をやらないことが、久光さんにとってはストレスになることもある?

ストレスもそうだし、何よりも試合に出る権利というか、ピッチに立つことに対して、責任を持たないといけないんだから、練習を中途半端にやって、試合だけやりますというのはイヤなんです。たまたま結果を残したとしても、それは素晴らしいことだと僕は思わない。結果も大事だけども、それに対する過程というか、今うちの選手たちに伝えないといけないことも、練習でしかたぶん見せられない。試合での結果っていうのは、練習でやってきたことが出ると思うので。だからこそ、僕はそこに手を抜きたくないし、他の選手と同じ本数はできなくても、同じメニューをこなして、同じように練習をしたい。その結果、監督が使えると思えば、メンバーに入れてもらえばうれしいし、それができなければメンバーに入る資格はないと思っています。

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伝えられることがある限り、やり続けたい

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