2019.11.07 Thu

Written by EDGE編集部

コラム

なぜ木暮賢一郎は「ボランチ講習会」をやったのか? 「日本ではボランチの本質的なところが理解されていない」

2016-17シーズン、名古屋オーシャンズ以外で初めてFリーグ優勝チームとなったシュライカー大阪。木暮賢一郎監督が率いたチームで重要な鍵を握っていたのが「ボランチ」と呼ばれる戦術だった。

日本一のチームが採用したことでボランチを取り入れるチームは増えていく。SNSでは試合の映像を動きを切り取って解説する動画も出回った。

ただ、木暮監督によれば「日本でボランチを正しく理解できている人は多くない」という。それゆえに「何となくコピーしてしまうと、うまくいかないし、チームのためにもならない」と危機感を抱いている。

日本フットサルが世界の強豪国に追いつき、追い越すためには、トップカテゴリーのみならず、すべての指導者がレベルアップしていく必要がある。

今回の講習会ではそうした木暮監督の思いから「ボランチ」という一つの戦術について、メカニズムから、動きのバリエーション、具体的なトレーニングまでを掘り下げている。

「ボランチ」はどのように生まれたか

--木暮監督が「ボランチ」をテーマにした講習会を開こうと思ったのはなぜだったのでしょうか?

今はSNSなどに、フットサルのプレー動画に解説がたくさん上がっているじゃないですか。「ボランチ解説動画」みたいなものもある。カテゴライズしていくのは大事ですが、本質的な中身の理解と言葉の定義が、イコールになっていないといけません。ボランチにしても、発信している人が違うと言葉も違ってきます。同じようなアクションでも名前が違うこともある。

大事なのは、こういう狙いがあるから、こういう動きをするという、本質的なところを理解すること。日本の場合はフットサルの普及をしている段階ですし、そこに興味を持ってくれるのは良いことですけど、大事なのは「その戦術を、何のためにやるのか」です。メリットはなんなのか。デメリットはなんなのか。相手が対策をしてきたらどうするか。どういうタイプの選手が必要なのか。3-1、4-0、2-2でもできるのか。

「ボランチ」という戦術ができた背景や、トレーニングへの落とし込み方、そこから派生するアクションなどを、僕自身がシュライカー大阪や女子日本代表を通じて整理したものがあるので、それを講習会を通して伝えられたらと思ったんです。

--「ボランチ」という言葉だけが一人歩きするのは危険だと。

もしかしたら「ボランチ」を僕が日本で初めて導入した思われているかもしれませんが、そうではありません。アジウ監督の時の名古屋オーシャンズ、館山マリオ監督の時のバサジィ大分、バイアーノ監督の時のペスカドーラ町田もやっていました。そうしたものを、自分なりに解釈して、ブラッシュアップして、どんどんオリジナルになっていく。そういうサイクルこそが指導者にとっては大事です。

--動きを真似するだけでなく、どうやって落とし込んでいくかという過程がなければいけない。

はい、だから、今回僕が話すことをそのまんま真似をすればうまくいくかというと、そうではありません。それを聞いた人の解釈があって、自分のチームに合った形で落とし込まないといけないし、選手が実行できなければいけない。そういうことの繰り返しで指導者自身のレベルも上がっていきます。

--木暮監督が考える「ボランチ」とは、どのようなものでしょうか。

よくイメージされるのは、アルトゥールがボールを持っているところに、小曽戸允哉が前から下りてきて、ちょんと横に出したパスをもらう、というものだと思います。小曽戸がやっているあの動きは、ブラジルでは「ジセーザ」と呼ばれています。これはアルトゥールのお父さんでもある元ブラジル代表監督のペセがつけたものです。アルトゥールから聞いたのは、「ジセーザ」とはその時にテレビに出ていた人の名前だそうです。良くも悪くも、呼び方にはそこまで深い意味はありません。

自分の解釈としては、「ボランチ」というのは総称です。ボランチと呼ばれる動きをベースに、いろいろなアクション、オプション、システムだったりがそこに含まれている。

--木暮監督が「ボランチ」と出会ったのは?

2008年のW杯でペセ監督が率いるブラジル代表が優勝した後、2009年から2011年ぐらいに、ボランチがちょっとしたブームになんたんです。ただ、個人的な記憶で言えば、2006年に代々木でブラジル代表とやった時に、ヴァウジンがやっていたんです。同じ試合に出ていた高橋健介(現インドネシア代表)も、初めて見たと言っていました。ということは、2006年の時点ですでに、ボランチの原型となるアイデアはあったということです。

ゾーン気味の相手に対して、どうやって数的優位を作るのか、どうすればマークにつきづらいのか。何かしらの課題があって、それを解決するためにどうするか。そういうサイクルがあります。根本的なところの理解を深めないまま、ただ動き方だけをコピーしてもうまくいきません。

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ボランチは守備の原理原則の逆を突く

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