2019.03.21 Thu

Written by EDGE編集部

Fリーグ

【伝説の証言者】10年後の名古屋のキャプテン。「あの大会から、自分を含めた物語が始まった」(星龍太)

写真:本田好伸

【伝説の証言者】FUGA MEGUROはなぜ日本一になれたのか? 7人が明かす「史上最高の下克上」の真実 Witness 7

 

出会いこそが、人生を変えるすべてかもしれない。あのチームと出会い、あの大会と出会い、一人の男の人生は大きく動き始めた。名古屋オーシャンズのキャプテン・星龍太。2009年優勝当時の出場メンバーだが、その半年前にはまだ競技フットサルを始めていなかった。フウガと出会い、全日本選手権に出場して、日本一になって、龍太は進むべき道を決めた。物事をあえて逆から考えるならば、「史上最高の下克上がどうして起きたのか」ではなく、「史上最高の下克上が起きたから」こそ、10年後の物語へつながってきたのだ。

(取材・文・構成 本田好伸)

自らの軌跡で、フウガの価値を証明した男

 2019年3月10日、“再び”日本一になった。

 2011シーズンに加入して、次の1年間だけ府中アスレティックFC(現・立川・府中アスレティックFC)でプレーしたが、翌年再加入してから6年間はずっと日本最強クラブで戦ってきた。名古屋オーシャンズのキャプテン・星龍太。2016シーズンにキャプテンを任されて、王者の宿命でもある大きなプレッシャーと向き合ってきた。

 優勝の瞬間、そこに爆発的な歓喜はなく、噛みしめるような静かな喜びがあった。勝利が当たり前のクラブでは、敗戦への恐怖が心を支配して、喜びよりも安堵が先に出る。龍太の姿は“絶対王者”の象徴だった。

 遡ること10年。彼は初めて「日本一」というタイトルを手にした。フットサルと出会い、フウガに加入してわずか半年のことだった。「いきなり優勝したら、それはハマりますよね」。右も左も分からないまま連れてきてもらった頂点の景色は、とにかく爆発的な歓喜で彩られていた。

 10年後、このチームから名古屋のキャプテンを輩出すると、誰が予想していただろう。

 本人でさえも考えていなかった物語が、そこにはあった。フウガというチームに、もっとも人生を変えさせられた選手こそ龍太なのかもしれない。彼の歩んだ10年は、あの時代のフウガの価値そのものなのだ。

「今日負けたら、黒歴史じゃないけど、キャプテンを降ろされると思うし、クビになると思うし……プレッシャーがあったり、肩の荷が下りたというか、嬉しさとか感情が爆発した感覚でした」

 そう話したのは、今から1年前のこと。2016シーズンに名古屋が10年目で初めてリーグタイトルを失い、その年からキャプテンを任されていた龍太は、王座陥落の責任を一手に背負い込でいた。だからこそ彼は、ピッチに泣き崩れながら、王座奪還の喜びと安堵を噛み締めていた。どうすればいいのか……。屈辱の敗戦から1年、悩み抜いて見つけたのが「家族のようなチーム」という新しい名古屋のスタイルだった。

 日々の練習ではもちろんバチバチの競争を見せつつも、ピッチを離れればファミリーのような仲の良さが際立つ様子は、これまで「唯一の完全プロチーム」には見られなかった光景。助っ人ブラジル人や龍太の周りに集まったメンバーの人柄にも助けられながら、彼らは技術・戦術・メンタルに「チーム力」を加えた。

 思い返せばそれは、まさに10年前のフウガと重なる。日々の練習の強度の高さとピッチ外の仲の良さ、類まれな結束力が最大の魅力であり、それこそが地域で絶対的な存在感を放った彼らの強さだったのだ。

 龍太は10年の時を経て、「名古屋のフウガ化」を結実させた。しかし10年後の日本一の舞台で見せた表情は、意外にもあの時、ピッチ上で見せた爆発的な感情とは全く異なるものだった。

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奇跡のチームから物語が始まった

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