2019.03.18 Mon

Written by EDGE編集部

Fリーグ

【伝説の証言者】勝ち越し弾、決勝弾を奪った男。「ヒューマンパワーにあふれたフウガが果たした役割」(荒牧太郎)

Fリーグのライバルとなったフウガ

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 フウガは大会前にも「こんなやつら」に出会っている。湘南ベルマーレと練習試合をして、ボロ負けしたのだという。その経験は、地域で絶対的な立ち位置になり始めていた彼らに、現在地を再認識させる十分な機会となった。

「あの結果があったからこそ、選手権でも(自分たちがずっとやってきたスタイルではなく)ゾーンで引いて守ってカウンターというやり方を割り切れたんだと思います。1次ラウンドで名古屋と対戦できたこともよかった。2-3の僅差で手応えもありましたけど、すごく謙虚になれました。めぐり合わせもよかった」

 謙虚になれる。それは彼らの言葉を借りると「ヒューマンパワー」なのだと思う。

「あの時のフウガは、人としてのポテンシャルがハンパなかった。『HP』ってありますよね。あれをフウガでは、ヒットポイントではなく『ヒューマンパワー』と言っていました。身体能力という意味ではなくて、『人としてのパワー』を持っていた人がすごく多かった。嫌なことがあればみんなで解決できたし、いいことがあればみんなで喜べる。当時は楽しいフットサルに夢中で全力でやっていましたけど、あんなチームは今思えばないですよ。意識も高いし、いろんな示し方をしてくれました。フトさん(太見寿人)はあまり話さないけど、キチッとしたパスが来ないと何かを言うわけではなくプレッシャーを感じましたし、それを悟って、いいパスを出そうとする選手がいたり。(関)健太朗さんとかタケさん(金川武司)のような(ムードメーカーになれる)人もいたりとか、バラバラな個性があって、それを受け入れられる人間性がある。それでなおかつ、みんなが試合に出るための努力をしている。ちょっと特別。偉大な人ばかりでした」

 あえて抽象的に言うなら、フウガの勝因は「ヒューマンパワーで上回ったから」だ。須賀監督も、決勝後に「ヒューマンパワーが2倍はあった」と振り返っていたほどだった。

 この抽象度の高い言葉こそ、フウガらしさの象徴かもしれない。ただ優しいとか、いい人とか、仲が良いとか、そういうことではなく、自分自身や仲間、チームと向き合いながら、常に全力で生きているということ。真剣勝負の中で楽しみを見つけられる人種。そうした彼らが持つ特異性を踏まえて、「競争がないと、成長はないと思う」と、荒牧は言う。

 彼は今、ヴォスクオーレ仙台という東北唯一のFリーグクラブで、現役選手として日本フットサルを盛り上げることに向き合っている。詳細は割愛するが、深い思いの中で、彼が「ライバルを増やすこと」と表現する競争原理こそが、非常に重要な考え方ではないかと気づかされる。

「ヴォスクオーレ仙台が地域のチームに負けるくらいの環境を自分たちで作らなきゃいけない。例えばアジアのサッカーを見てもそう。日本代表は、アジアの中では決勝が当たり前ですが、ワールドカップに出られないくらい、どんどん指導者を送り込んで他国を強くすれば、日本のレベルも上がると思います。南米王者のチリがワールドカップに出れないくらいですからね。つまり、自分たちを強くするために選手を集めて、他を弱くしようという発想ではよくないということ。それで得られるのは短期的な結果であって、長期的な結果を得るには、自分たちに厳しい環境を自ら作らないと。それがレベルアップにつながると思います」

 まさに、あの時代のフウガが、そういう存在だった。フウガからすれば、Fリーグがあるからこそ、そこに一石を投じるような存在を目指し続けられた。一方でFリーグからすれば、自分たちを脅かす存在が、トップリーグに甘えは許されないという危機感を抱かせてくれる。そんな関係が、あの時に形づくられたのだ。

「(Fリーグのチームにとっては)厄介な存在だったと思いますよ。でもそういうやつらが現れて、今もまた強いチームを作ってFリーグに参戦している。フウガの果たした役割はすごくあると感じています」

 人間力にあふれる彼らは、自分たちの立ち位置を把握して、チャレンジャーとして挑み、明確にFリーグのライバルとなった。だからあの時代のフウガは、10年後の日本フットサルにも生き続けているのだろう。

Interview & Directed, Key Visual by Yoshinobu HONDA

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【Contents】【伝説の証言者】FUGA MEGUROはなぜ日本一になれたのか? 7人が明かす「史上最高の下克上」の真実に迫る

Witness 1 フウガ・イズムの生みの親と伝道師。「奇跡のチームはこうして生まれた」(須賀雄大監督&金川武司)
Witness 2 決勝の出場時間はゼロ秒。「あの試合がなければFリーグを目指していなかったかもしれない」(深津孝祐)
Witness 3 スタンドで涙を流した男。「出られない悔しさがなかったのはあれが最初で最後だった」(渡邉知晃)
Witness 4 勝ち越し弾、決勝弾を奪った男。「ヒューマンパワーにあふれたフウガが果たした役割」(荒牧太郎)
Witness 5 狂犬と呼ばれいたあの頃。「頭の中の理性と野生が共存していた」(星翔太)
Witness 6 奇跡のチームのその後のストーリー。「ただの通過点」(須賀雄大監督)と「達成感」(金川武司)
Witness 7 10年後の名古屋のキャプテン。「あの大会から、自分を含めた物語が始まった」(星龍太)
Afterword あとがきにかえて。「10年前と10年後の彼らが、“今”を生きる僕たちに教えてくれたもの」

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