2018.11.08 Thu

Written by EDGE編集部

コラム

「日本にはGKを育む環境が整っていない」。内山慶太郎が考える日本フットサルの課題とは?

写真:本人提供

現役時代は国内屈指の理論派ゴレイロとして活躍し、現在はフットサル日本代表の全てのカテゴリーでGKコーチを務める内山慶太郎氏が「UCHIYAMA GOLEIRO ACADEMY Supported by FutsalEDGE」を開講する。トップレベルから育成年代、エンジョイ層に至るまで、これまで様々なカテゴリーの選手を指導してきた内山氏。9月には多忙なスケジュールの合間を縫ってスペイン1部エルポソ・ムルシアFSでのコーチ留学を敢行するなど、代表コーチとなった今でも研鑽を欠かさない。そんな“ゴレイロ道”を極めている内山氏から見て、「日本のGKの課題」とはどんな部分なのだろうか。
(取材・文 福田悠)

日本とスペインの大きな差はGK

--内山さんは海外のトップレベルから国内の小学生年代まで、実にありとあらゆる現場を見てきていると思います。そんな国内外両方に精通する内山さんから見て、「日本のGKの課題」とはどんな部分だとお考えでしょうか。

「GKを育む環境が整っていない」ことが、現時点での日本の一番の課題だと思います。

例えば育成年代のGKを取り巻く環境を比べると、日本とスペインでは大きな差があります。スペインではGKに対する指導の基本を理解したレベルの高い指導者がたくさんいますし、コートや用具などのハード面を含めたトレーニング環境においても日本より充実しています。幼少期から同じ時間トレーニングを積んだとしても、その内容や質が異なれば当然その中から出てくる選手たちのスキルも変わってきますよね。

スペインがレベルの高いGKを輩出し続けられる理由はそこにあると思います。逆に日本では専門のGKコーチがいるチームはまだまだ少ないですし、そもそものGKというポジションに対する理解度がまだ高くないように思います。基礎からきちんと学べる環境は限られているのが現状です。

--これはサッカーチームでも同様だと思うのですが、小学生チームの練習を見ていても、例えば2時間のトレーニングの中で前半のメニューをFPと一緒に行い、その後いきなり「じゃあシュート練習やるからGKに入って」と言われてしまうようなチームは山ほどありますよね。その後も紅白戦などの実戦練習の中でGKに入るだけで、本来それ以前にきちんと取り組まなければならないボールを使った専門トレーニングがほとんど行われない、というケースも多々あります。

そうですね。「GKに関する知識や経験がなくて、詳しく分からないから触らない」という監督やコーチが非常に多いのかなと思います。あるいは誰かから聞いた練習メニューや動画サイトで見付けたメニューを、その意図や目的も理解しないままにただ何となく行ってしまっているというケースもあります。

「そのトレーニングによって何を伸ばしたいのか」が具体的にはっきりしないまま取り組むことになるので、伸びるか否かが選手自身の気付きに委ねられてしまいますし、指導者の誤った思い込みで進んでしまうこともあります。

こういった環境は変えていかなければいけないですね。監督やコーチはチーム全体を見ていますから、当然GKについても同じようにしっかりと見なければいけないはずです。そこまで専門的ではなくても、基本的な技術や考え方、チームの中でGKに求められる役割などに関してはきちんと指導してあげてほしいなと思います。

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--スペインにもGK経験のない監督やコーチはカテゴリーを問わずたくさんいると思いますが、彼らのGKに対する関わり方というのはどういったものなのですか。

スペインの監督やコーチはGK出身の人でなくても「GKにはこうあってほしい」というビジョンをきちんと持っています。これは育成年代でもトップレベルでも共通していますが、「GKにはチーム戦術の中でこのように関わってほしい」といった考え方が明確に整理されているんです。

「GKのことはGKコーチに任せているから」と丸投げしてしまうことはまずありません。止め方に関して細かく要求してくることは多くはありませんが、それでも「GKにはこのような技術がある」ということは把握していますし、だからこそGKコーチとも同じ目線でディスカッションができるんです。

日本ではこのあたりのことをきちんと理解されていない指導者の方がまだまだ多いように感じますし、これはものすごく大きな差なんです。

--「GKのことはGKコーチに任せているから」という考えの監督は日本では競技レベルでさえかなり多いですよね。それって正に先ほど内山さんがおっしゃっていた「GKに関しては分からないから触らない」状態なのではないでしょうか。

 そうですね。例えばある失点シーンを振り返るときに、「今の場面ではディフェンスがボールホルダーに対して寄せきれたことでコースは限定できていたから、GKには前へ出ずゴールに留まって対応してほしい」といった具体的なコミュニケーションがとれるのか、「今のは止められただろう」と伝えるだけになってしまうのかでは雲泥の差があります。

チームの守備戦術の中で「なぜ失点してしまったのか」を的確に分析し、「どうすれば改善できるのか」「GKにはその中でどのようなプレーを求めるのか」といったところまでアプローチするためには、やはり監督やコーチもGKについてきちんと理解している必要があると思います。

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--これまでに挙げていただいた課題について、今回の「UCHIYAMA GOLEIRO ACADEMY Supported by FutsalEDGE」ではどのようにアプローチしていこうとお考えですか。

今回考えているポイントは3つあります。

1つ目は、「GKコーチはもちろん、GKの専門ではない指導者の方にもGKに関する知見を広げてもらえる場にしたい」ということです。専門的なGKコーチの人数を増やしていくにはまだまだ時間が掛かると思いますし、その中でGKの専門でない指導者の方々にもアプローチしていくことは非常に重要だと考えています。技術面で「このような技術がある」ということや「チームへの関わり」はもちろんですが、それだけでなく「GKに求められるメンタリティ」や「指導者とGKのコミュニケーション」などについてもお話しさせていただきたいと思っています。

2つ目は「情報の整理」です。現在はインターネットやSNSなどの普及もありGKに関する情報が数多く流通しています。その中にはもちろん素晴らしい内容のものも沢山ありますが、情報を受け取る側にGKに関する知識のベースがないと、本来あるべき受け取り方ができない、本来の意図と異なる解釈をしてしまう場合があります。知識を持たずにそこへ発展してしまうことで逆に選手に迷いが生じてしまうケースもあります。GKの基礎や、GKに求められることは何かというのを全3回の中できちんと整理したいと考えています。 

3つ目はそれぞれの環境への落とし込みです。GKに関する基礎知識があり、練習メニューも知っていたとしても、環境的にそれができないという状況は多々あります。例えば、チームにGKが1人しかいない、ゴールを使った練習ができない、ボールが多く使えない、などです。日本はスペインのような充実した環境がどこにでもあるわけではありませんから、それぞれの環境に合ったトレーニングの手法を考えていかなければいけません。GKについての知識のベースがあれば、限られた環境下でも工夫次第できちんと有効なトレーニングを行うことができます。 

--GKについて基礎からしっかりと学べるだけでなく、それを実際の指導やプレーに生かすところまでを考えた講習をしていただけるということですね。 

そうですね。全3回の講義全体を通してGKについて体系的に理解していただきながら、それぞれの環境下でそれをどう生かしていくかを考えてもらう機会にしたいと考えています。

※サッカーのGKとも関連する内容のため、記事内のポジションの呼称に関してはゴレイロではなく「GK」に統一させていただきます。

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全3回でゴレイロの基本・技術・戦術の全てを学ぶ!内山慶太郎GKコーチによるゴレイロアカデミーが開講決定!

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