2018.10.03 Wed

Written by EDGE編集部

コラム

フットサルがついに五輪種目へ。世界が熱望した舞台で、木暮ジャパンが戦う意味とは?

U-18フットサル日本女子代表は7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで始まる第3回ユースオリンピック競技大会に出場する。代表チームを率いる木暮賢一郎監督は「『ユース』というものは付いていますが、初めてオリンピックという名の付く大会でフットサルが種目となり、そこに行けるのは素晴らしいこと」と話したが、今回の参加には「素晴らしい」の一言で片付けられないような大きな価値があるのではないだろうか。
(文 本田好伸)

 フットサルがついにオリンピック種目になった──。

 U-18フットサル日本女子代表が10月7日からアルゼンチン・ブエノスアイレスで始まる第3回ユースオリンピック競技大会に出場する。「ユース」だが、まぎれもないオリンピック大会。日本だけでなく世界が待ち望んだ瞬間が、まもなく訪れようとしている。五輪種目化は、世界のフットサルの夢と希望なのだ。

 大いなる一歩を踏み出した今だからこそ、その価値を、意味を考えてみたい。

突如として手にした五輪種目化

 2008年8月、北京オリンピックのソフトボール競技で日本代表が金メダルを獲得──。

 その偉業は、後々の衝撃的なニュースとともに人々の記憶に刻まれている。遡ること2005年7月、国際オリンピック委員会(IOC)は、2012年のロンドン五輪でソフトボールの正式競技からの除外を決めた。五輪で二度とソフトボールを見れないかもしれない。そんな思いで各国代表チームが「最後の金メダル」を切望した中で、日本代表が栄冠を勝ち取ったのだ。あの時、エース・上野由岐子は輝いていた……。

 2009年の時点ではリオ五輪でも、2013年の時点では東京五輪でも、復活は見送られた。上野がその時に話していた「道がまたここで一つ、閉ざされてしまった」という言葉は印象的だった。

 一方で同じ時期に、正式種目からの除外がささやかれていたレスリングの存続が決まり、事前に涙ながらに存続を訴え続けていた吉田沙保里は「夢がつながった」と、大きな喜びを見せていた。

 五輪とはやはりアスリートの夢であり、憧れの舞台であり、生きる場所なのだろう。

 そこに出場できるかどうか、正式種目となるかどうかは、アスリートのモチベーションに大きく関わってくる。U-23年代のための舞台という位置付けのサッカーでも同じだ。日本代表から事実上の引退を示唆していた本田圭佑は今年8月、選手としての意欲を保つために「オーバーエイジ枠」で東京五輪を目指すという、前代未聞の意思表明をしたほどだった。五輪にはそれだけの価値があるということだろう。

 では、フットサルにおける五輪とは何なのだろうか。それは、灯火のようなものかもしれない。フットサルが国民的なスポーツとして認知されるブラジルで開かれた2016年のリオ五輪で種目化されなかった頃から、世界のフットサルはその道を諦めてしまっていたかのようだった。

 サッカーとは異なり、国際サッカー連盟(FIFA)やアジアサッカー連盟(AFC)、ましてIOCから発信されるフットサルの話題が日本で盛り上がることはほとんどない。業界に精通したごく一部の関係者だけが、FIFAで今、フットサルのどんなことが話し合われ、アジアでどんな大会が始まるのかを知っている。

 もちろん、メディアがアンテナを張って、そうした情報をつぶさに拾って発信していくことは責務だろう。しかし、フットサルメディア自体が少ない現状では、その諜報もあまり機能しない現実がある。

 今まさに、愛知県が招致活動を展開するFIFAフットサルワールドカップがいい例だろう。2017年1月に決まるはずだったものがズルズルと先延ばしとなり、開催まで2年しかないのにまだ開催地が決まっていない。FIFAやAFCで理事を務めたこともある小倉純二氏が「いついつのFIFA理事会で決まることになっているようです」と話しても、何度となく決定が先送りになってきた。我々に、正確な情報が届くことはない。

 この数年で、アジアではU-20アジア選手権や女子選手権が初開催されてきたが、そうした大会も「来年の5月に開催されるらしい」というところから始まり、日程が明らかになるのはたいてい開催の数カ月前だ。開幕直前に日程変更となるケースや、出場チームが変わるケースもある。それくらいアバウトなのだ。

 つまり、FIFAやAFCの大会でさえきちんと整備されていない中では、これまで開催の気配もなかった五輪で種目化されることなど考えられるような状況ではなかった。だから今回も、寝耳に水だった。

 ユース五輪にフットサルが採用されたのはいつなのだろうか? 国内では、2017年の秋頃には、男女ともに「アジア選手権で上位に入れば出場権を獲得できるらしい」という話が業界内にはあったが、アジアから何チームが出場できて、他には何カ国が出場してといった情報を持つ人には出会えなかった。

 いきなり五輪種目化を手にした。それがフットサルの直面する現実だろう。

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五輪でフットサルの爪痕を残せるか

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