2018.07.03 Tue

Written by EDGE編集部

コラム

ドリブルオンリーにロングボール合戦……。日本フットサルを停滞させる「指導者不足」に解決策はあるか。

写真:本田好伸

2012年にプロ選手として現役を退いた、現フットサル日本女子代表監督の木暮賢一郎氏は、「日本のフットサルが強くなるためには指導者のレベルアップが必要不可欠だ」といつも話してきた。だがいまだに、「指導者不足」という現場の声がなくなることはない。それは引いては、日本サッカーにも大きな影響を与えている。サッカーもフットサルも、日本が世界で戦える選手を輩出していくためには“質の高い”指導者の育成こそが必要──。木暮氏は、そんな思いから指導者が一緒になって成長していける機会を創出している。
(文・本田好伸)

子供の大会で蹴り合いになってしまう理由

「日本にはフットサルを教えられる指導者がいない」

 これまで、フットサルのトップシーンの取材を続けていて、指導者や選手からそんな言葉を何度も聞いた。それは単純に「数」のことではなく「質」のことだ。フットサルを教えているようで、本質を突いていない、競技特性を理解していない、フットボールの原理原則に基づいていない……。その状態でいくら指導しても、表面的な技術向上や戦術の引き出しにしかつながらず、世界で戦える選手の育成にはつながっていかない。

 これはフットサルに限った話ではないかもしれない。「フットサルはサッカーに生きる」と、もう10年以上もフットサル側から声高らかに発信してきたが、いまだサッカー側には、フットサルと真剣に向き合い、自分の指導に取り入れようとする人は少ない。ブラジルやスペインはもちろんのこと、それこそロシア・ワールドカップを見ていれば、そこにフットサルのエッセンスが散りばめられていることは明らかなのに。

 日本サッカー協会に登録している、2017年度のフットサル監督は、Fリーグや日本フットサル連盟傘下の地域リーグなど、トップで指揮を執る第1種の1,813人以下、第2種、第3種、第4種の合計が2,122人。指導者に枠を広げると、2017年4月にフットサルA級ライセンスが新設されたが、2017年度はB級が165人、C級が1,374人で合計1,539人。つまり、フットサルの指導者は2,000人程度しかいないことになる。

 フットサル選手登録数が43,618人ということを考えると、おおよそ20人に対して指導者は1人。フットサルのクラブは15人から20人で登録することが多いため、チームに1人しか指導者がいないことになる。議論を指導の「質」に広げたい現状においても、そもそも指導者の「数」が少ないということも明らかなのだ。

 ここで「(質の高い)フットサルを教えられる指導者がいない」という本題を考えてみたい。

 その最たる例は、ジュニア年代におけるフットサル最高峰の大会で見ることができる。以前、2016年大会の決勝で起きた事象をもとに「“投げ合い”から”蹴り合い”へ──ポートボール化するバーモントカップ。このままで子どもたちは成長できるのか?」というコラムを書いたが、ロングボールをゴール前に蹴り込み、高さと強さを持つゴールゲッターが決めるという単調な戦い方については、様々な議論が生まれた。この問題の根本こそが、指導者不足につながっていると感じる。

 競技規則には、どこにも「ロングボールをゴール前に蹴り込んではダメ」とは書かれていない。むしろ、チームに所属する選手のストロングポイントを理解した上で、キックの精度と得点力を生かすのは常套手段だろう。結局、その戦いに対抗できない守備が問題であり、試合中に対処して(本来であれば、そうした戦いは分析で明らかになるため試合前の対策が必須)、選手に解決策を伝えられない指導が大きな問題だった。

 フットサルは交代が自由であり、前半後半で1回ずつのタイムアウトを取れるため、監督やコーチの意図や狙いを選手に伝えられる機会は試合中にたくさんある。だからこそフットサルは、小手先の技術ではなく、その先にある戦術、戦略の判断や決断、実行というところで生じる駆け引きが勝負を分けるスポーツなのだが、指導者にアイデアがなく、選手も状況に応じたプレーを選べないために「技術勝負」に終始しているのだ。

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フットサルを教えられる指導者が求められる

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