2018.04.11 Wed

Written by EDGE編集部

Fリーグ

病と向き合う子どもたちに本物のフットサルを。観客35人の前で現役Fリーガーが見せた“真剣勝負”。

写真:本田好伸

ボラ、皆本晃、滝田学、藤原潤……。4月8日、神奈川県立こども医療センターの中にある体育館に、 Fリーグのトップ選手たちが集まった。その目的は、病気と闘っている子どもたちの前で、“本物のフットサル”を見せること。主催は、デウソン神戸の鈴村拓也監督と湘南ベルマーレの久光重貴が代表理事を務める一般社団法人リングスマイル。自らもがんを発症し、闘病生活を送ってきた2人が始めた活動は、フットサル界全体を巻き込んだものになりつつある。
(文 本田好伸)

みんなで笑って、前を向いて生きていく

 4月8日(日)、神奈川県立こども医療センターで「フットサルリボンチャリティーマッチ」が開催された。施設内にある体育館に、普段はFリーグでプレーしている現役選手たちが集まった。

 観客は、子どもたちと保護者を含めて30人程度しかいない。だが、ピッチに立った選手たちのテンションは真剣勝負さながら。フットサルならではのスピードあふれる攻防や、トリッキーなテクニック、迫力満点のシュートを次々と飛び出す。

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 イベントを主催したのは、デウソン神戸の鈴村拓也監督と湘南ベルマーレの久光重貴が代表理事を務める一般社団法人リングスマイル。鈴村監督は2012年に上咽頭がん、久光は2013年に右上葉肺腺がんの発症が発覚したが、その後も闘病生活を送りながらピッチに立ち続けてきた。

 久光と鈴村が中心になってフットサルファンへのがん啓発と小児がん患者を支援するプロジェクト「フットサルリボン」を立ち上げたのは2014年。それから、ずっと続けているのが病棟への訪問だ。きっかけは、久光が東北の病棟を慰問した時に医師から言われた一言だった。

「この病棟にいる子どもたちは2度とこの病棟から出ることができません。大好きな新幹線を見ることもできなければ乗ることもできません。新幹線はテレビや本で知ることができても本物に触れ合うことなく人生を終えていきます。でも久光選手たちが来てくれたことで本物を見ることができます。病棟内で本物のフットサル選手のプレーを見ることが子どもたちにとって本物に触れ合うチャンスなのです」

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 病気で試合を見に行きたくても行けない子どもがいる。それなら、自分たちが子どもたちのところに行けばいい。久光、鈴村は湘南ベルマーレで選手として活動する合間を縫って、子どもたちと触れ合ってきた。そして、2人の思いに賛同した選手、監督たちによるチャリティーマッチが実現した。

 日本代表経験のある選手がずらりと並んだ「レジェンドチーム」と、これからのフットサル界を背負う選手たちで構成された「ヤングチーム」。試合はヤングチームが3点を先取すると、これで闘志に火が点いたレジェンドチームも追い上げて、3-4と前半から7ゴールが生まれる乱打戦となった。

 前半を終えて、上村充哉が「レジェンドチーム? まだまだっすね。このままボロ勝ちしたいと思います」と煽ると、レジェンドチームは後半に逆襲。皆本晃、ボラが3得点、鍛代元気が2得点と活躍して、終わってみれば9-7とレジェンドチームが逆転勝利を収めた。

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 9歳の男の子が「テレビで見たことはあったけど、生で初めて見て、すごく面白い!」と感想を話していた。その後、ピッチでは選手と子どもたちの交流の場が持たれた。初めてボールに触れる子もいれば、見事なボレーシュートを見せる子も。子どもたちだが、一つだけ共通点があった。

「試合中も今もそうですけど、笑顔が自然と出る。これは素晴らしいこと。これからの人生、みんなで笑って、笑顔を作って、前を向いて生きていきたいなと、改めて思わせてもらいました」

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 今回、鈴村監督と久光と交流のある、一人のJリーガーが参加していた。大宮アルディージャの塚本泰史だ。2010年に右大腿骨骨肉腫を患ってピッチを離れたが、今はクラブアンバサダーを務めながら、再びピッチに立つことを目指してトレーニングを続けているという。塚本は子どもたちの前でこう話した。

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「今日、僕はちゃんとプレーできていました? 僕は2008年に大宮に入って、2010年に骨肉腫を患いました。今、僕の右膝には人工の関節が入っています。お医者さんには『もうサッカーはできない』と言われてしまったのですが、本当に毎日、努力を重ねて、ここまでできるようになりました。治療中は辛くて大変な思いをたくさんしましたが、もう一度サッカーがしたいという思いだけで乗り越えました。みなさんも辛いことや苦しいことがあっても、いつか明るい未来があると信じて頑張ってもらいたいです」

 久光は子どもたちに「今を一生懸命に生きよう」と語りかけた。

「この時間は当たり前じゃない。僕自身もプレーできるのは当たり前じゃないし、来年は選手ではないかもしれない。分からないからこそ、今を一生懸命に生きて、プレーしている。みんなも一生懸命に治療して、その先にあるやりたいことができるように、一緒に頑張っていけたらと思います」

 久光と鈴村は「Fリーグを見に来て」と言っていた。ただ、子どもたちの中には、試合会場に行きたくても行けない子もいる。だからこそ、選手たちが出向いてプレーを見せているはず。なぜ、見に来てほしいと言うのか。そこには2人からのこんなメッセージが込められていた。

「治療して病気が治ったら、今度は会場で会おう」

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■主催
一般社団法人リングスマイル
■協賛
オリエンタルバイオ株式会社
株式会社アントレックス
株式会社伊藤園
■施設協力
神奈川県立子ども医療センター
■審判協力
湘南ハイビース
■運営
株式会社クリアソン
■参加メンバー
久光重貴(湘南ベルマーレ)
鈴村拓也(デウソン神戸監督)
ボラ(フウガドールすみだ)
藤原潤(バルドラール浦安)
完山徹一(府中アスレティックFC)
皆本晃(府中アスレティックFC)
滝田学(ペスカドーラ町田)
鍛代元気(湘南ベルマーレ)
清水誠也(フウガドールすみだ)
田口元気(フウガドールすみだ)
原辰介(ペスカドーラ町田)
上村充哉(府中アスレティックFC)
飯田千馬(湘南ベルマーレ)
高溝黎磨(湘南ベルマーレ)
石田健太郎(バルドラール浦安)
空涼介(バルドラール浦安)
北原亘(元フットサル日本代表)
塚本泰史(大宮アルディージャ)
■MC
鈴木理
久光邦明

※久光選手と鈴村監督が代表を務めるフットサルリボンの活動についてはこちらをご覧ください。

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