2018.01.09 Tue

Written by EDGE編集部

Fリーグ

おかえり、稲葉洸太郎。怪我を乗り越えたベテランが復活ゴール後に見せた“涙”の意味。

ピッチに立てなかった7カ月

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 稲葉にとって、大きなケガは初めてではない。2009年8月、当時、浦安でプレーしていた稲葉は、練習中に負傷し、右膝半月板損傷と骨膜炎の重傷でシーズン開幕前に離脱してしまった。手術を経て復帰したのは約5カ月後の2010年1月、シーズン終盤のことだった。

 その頃の稲葉は、まさに“脂の乗った”時期。「だましだましやっていたから100パーセントのプレーができなかったけど、3年後のワールドカップに向けて、それではやれない」。そんな思いから手術に踏み切った。そうして戻ってきた稲葉は、ピッチでそれまでの100パーセント以上の力を発揮していた。

 稲葉の真骨頂といえば今も昔も「相手をすり抜けていくようなドリブル」だろう。でも1回目のケガから復帰した時のドリブルは、ただすり抜けるだけではないものへと変貌を遂げていた。「絶対にケガをプラスに変えようと思っていたし、バランスや体の使い方を意識するようになった」。そうやって軸のブレないドリブルを体得したことで安定感が増し、ドリブラーとしてだけではなく、プレーヤーとしても幅を広げた。

 今回のケガもまた、練習中の出来事だった。「相手と接触して弱っていたところで、強度の高いランニングのメニューをしていたら、方向転換の踏み込みで骨が剥がれてしまった」。受傷名は「右大腿骨外顆剥離骨折」。1回目のケガは無理を承知でプレーしてきた積み重ねによって生じたものだが、今回は勝手が違う。「手術をして、骨を取り除くしかなかった」。稲葉は、自身2度目となる右膝の手術を経験した。

「ケガをすればもちろん、へこむこともある。それに、チームの調子がよければ、嬉しい反面、焦りも出てくる。逆に調子を落としていれば、『自分が出ていたら……』という気持ちも出てきてしまう。選手としては仕方のない感情だとは思うけど、すごく複雑な気持ちで試合を見ていた」

 2回目のケガだから慣れるというわけではない。焦りや不安は、当然ある。「前回は26歳だったけど、その時とは体の状態も違うし、今回のほうが、リハビリもトレーニングも慎重になった」。だからこそじっくり体と向き合ってきたが、それでも「前回と同じように、ケガをプラスに変える」という決意があった。

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俺はここにいるぞと伝えたかった

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