2018.01.09 Tue

Written by EDGE編集部

Fリーグ

おかえり、稲葉洸太郎。怪我を乗り越えたベテランが復活ゴール後に見せた“涙”の意味。

写真:本田好伸

2017年6月、今シーズンのリーグ戦開幕を目前に控えた時期に、右膝を故障して戦線離脱していた稲葉洸太郎が、7カ月ぶりに実戦復帰。今シーズンのリーグ戦初出場となった稲葉は、残り4秒でパワープレー返しによる復帰弾をマークした。このゴールにチームメートが大きな大きな歓喜を起こすと、そんな仲間の姿を見て、稲葉自身は涙した。稲葉にとってキャリアで2回目の長期離脱となったが、彼はこの半年間をどんな思いで過ごしてきたのか。
(文・本田好伸)

特別な意味があったゴール

HND_9755

「おかえりなさい」。AbemaTVの試合後インタビューに呼ばれた稲葉洸太郎は、レポーターの加藤未央からそう声を掛けられると、「ただいまです」と言葉を返した。

 試合は残り4秒。パワープレー返しのゴールが決まると、ベンチもピッチの選手も監督もスタッフ陣もみんな、まるでリーグ優勝を決めた瞬間のような歓喜を起こした。スコアは7-0から8-0になっただけ。すでにプレーオフ進出を決めていたフウガドールすみだにとって、バルドラール浦安と戦った第32節のこの試合に“特別な何か”が懸かっているわけでもなく、その1点で結果が変わるわけでもなかった。勝敗はもう、決していた。でもすみだにとって、この試合のこのゴールには、特別な意味があった。

 稲葉がケガによる長期離脱から復帰し、約7カ月ぶりにピッチに立った。リーグ開幕前のカップ戦以来となる公式戦であり、彼にとっては今シーズン初めてのリーグ戦。そんな試合で稲葉は、ゴールを奪った。

「正直、今日得点を狙っていた」

 稲葉は復帰戦を“普通の試合”にはしたくなかった。「サラッと復帰するよりも何かを残したかったから、すごく気合が入っていた。その分、久しぶりの試合で緊張もあったし、ワクワク感もあった」。ただ、ピッチに戻ってきた稲葉のパフォーマンスは、良くも悪くも、ケガ以前の印象と変わらなかった。「内容としては、最低限くらいの出来だった。でも何度かあったチャンスで決められなかったし、こんなもんかなと思っていたけど、最後に自分のところに転がってきたのはラッキーだった」。まさに土壇場のゴールだった。

 ただしこのゴールは、チームの稲葉への思いがなければ生まれなかった。相手がパワープレーを始めた残り7分を切った時点でも、残り3分を切った時点でも、稲葉はピッチに立っていない。通常、相手がパワープレーをしてきている時に、守備側のメンバーが交替することは多くない。稲葉の役目はもう終わったかに思われた。だが、須賀監督はここで、稲葉をピッチに送り込んだ。「点差も(0-7と)開いていたし(点を取ってこいという)メッセージがあったのかもしれない」。稲葉のゴールは、そんな中で生まれた。

「ちょうどベンチの前でゴールを決めたから、横を見たらベンチ全体がうわーって盛り上がっていて、みんなが僕をあんなに囲んでくれて、こんなに喜んでくれる仲間がいることに感動した」

 ゴールを決め、ほどなくして試合が終わって整列する稲葉の目には、涙が浮かんでいた。

<次のページ>
ピッチに立てなかった7カ月

1 2 3

◀︎前の記事 トップ ▶︎次の記事