2017.08.16 Wed

Written by EDGE編集部

Fリーグ

ずっと報われなかった。だけど諦めなかった。“究極の苦労人”府中・飛騨龍典が10年越しで立ったFリーグのピッチ。

天と地の落差を味わった2日間

HND_9858

 初先発の翌日、飛騨は第10節のペスカドーラ町田戦でも先発したが、前日のようなパフォーマンスを示せなかった。マルコスからは、「まるでジェットコースターのような2日間だな」と言われたという。

「初戦は出来すぎだったし、同じようにはいかないと準備していたが、そんなにうまくはいかなかった」。

 先制を許した後の2失点目は、キックインで蹴り込まれたボールをつかみ損ねる痛恨のミスからだった。さらに、ゴール前で味方との連係が合わず、続けざまに3失点目。1-5で折り返した後半、ゴールを守っていたのは飛騨ではなく、弱冠20歳の山田正剛だった。試合終盤、その山田が負傷したことで再びピッチに戻る機会を得たものの、チームも飛騨も成す術なく2-8で惨敗。まさに、天と地の落差を味わう2日間となった。

 それでも飛騨は、前を向く。「初日のプレーで満足してしまうかと思っていたが、2日目にこういうパフォーマンスをしてしまい、また課題がたくさん出た。自分自身、まだまだ成長できると感じた」。

 念願の舞台に立てた満足感は、飛騨の心には生まれなかった。「第7節のエスポラーダ北海道戦で初めてベンチ入りて、次のフウガドールすみだ戦でまた外された。その試合は、クロモト一人が登録されていて、途中で彼がケガをしたから、もし入っていたら……。悔しかった」。

 そんな思いが、飛騨自身を前へ前へと向かわせていた。「普通に考えたら、この年齢でチャレンジして何があるのかと言われてしまうかもしれない。でもそういう声は関係なくて、できなかったことができるようになっていくこと、成長できることを楽しめている」。

 飛騨の今シーズンの目標は、「メンバー入り」すること。

「自分に自信がないわけではないが、日頃から見ているクロモトとトシはFリーグでも飛び抜けている。それに、若い山田もいる。そこに入るのは簡単じゃない。試合に出れる準備ができていると監督に思ってもらえて、初めて選ばれる。だから練習でアピールし続けないといけない。何回入っても変わることはなく、とにかく今は、メンバーに入ることが目標」。

 飛騨はそう言って笑う。

「サテライトでは、ミスをしないようにという考えが逆に、ミスにつながっていた。でもマルコスから、『ミスしても良いプレーができるメンタルに変えよう』と言われたことが大きかった」。

 鳴かず飛ばずのパフォーマンスで居場所を失いかけていたときのGKコーチの言葉が、飛騨を本来の姿へと導いた。「どんどん自分のところに飛んでこいって、サッカーを始めたばかりの頃のような気持ちになれた」。飛騨は今、プレーを楽しんでいる。

 次の試合、飛騨がゴール前に立っているのか、むしろ、メンバー入りしているかすら分からない。もしかしたら周囲は、結果の出ない飛騨を笑うかもしれない。でもそんなことは関係ない。飛騨はピッチに立てるように、メンバーに選ばれるように、日々の練習を全力で、ただひたむきに頑張り続けるだけなのだろう。

 人はつい、目先の結果で将来を決めつけてしまう。でも等身大の自分と向き合い成長を求め続ける限り、不可能はない。可能性とは常に自分のなかにあることを、飛騨はその姿で示しているのかもしれない。

 

<合わせて読みたい>
エースナンバーを託された内田隼太。勝利のために“レジェンド”の背中を追う。

1 2 3 4

◀︎前の記事 トップ ▶︎次の記事