2017.06.19 Mon

Written by EDGE編集部

Fリーグ

湘南のルーキー・小門勇太が流した涙の理由。クラブを支え続けた“おじいちゃん”に捧げた地域の勝利。

帝京高校、オーストラリア、そしてFリーグへ

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 突然だが、「小門の女」というフレーズをご存知だろうか。お笑い芸人・とんねるずの小話で登場する、知る人ぞ知る“小門”こそ、小門勇太の父親のことだ。高校時代に帝京高校で高校選手権を制覇したメンバーの一人で、同期の木梨憲武を抑えてFWを任されていた人物が父、洋一である。

 洋一は、高校卒業後に競輪の世界に足を踏み入れた。そんな“規格外”の血を受け継ぐ勇太もまた、数奇な巡り合わせで、今年2月から本格的にフットサルを始め、わずか4カ月でFリーグのピッチに立った。

 帝京高校から国士舘大学に進み、社会人チームの早稲田ユナイテッドでプレーしながら、2015年にオーストラリアのトライアウトを受けた。「ただサッカーを続けるのは嫌だったし、プロ環境でやりたかった」。前年にリーグ優勝していた2部リーグのチーム、ボニリッグ・ホワイトイーグルズとの契約を勝ち取り、FWとしてプレー。ただ、その挑戦は長くは続かない。「他の国でもやりたくて移籍を模索したが話がまとまらなかった。それで、もういいかなって」。そうして、現役引退を考え始めていた。そんな矢先の湘南からのオファーだった。

 「毎年、正月に湘南の初蹴りがあって、『功オールスターズ』として小学校時代の仲間たちと参加していた。その時に、帝京高校の大先輩、阿久津(貴志/GKコーチ)さんや久光(重貴)さんに声を掛けてもらった。久光さんからは、『まだ若いし、辞めるのはもったない。フットサルで挑戦してみないか』って」。Fリーグの環境は、プロ生活ができたサッカーとは大きく異なる。それでも、新たなスタートを決意した。「実際は、フットサルを少し舐めていた。でも、自分の能力を信じることで、次のステージで再挑戦しようという気持ちになれた」。

 その体格を見れば、彼の自信が過信ではないことは容易に想像ができる。見劣りしないどころか、サイズの大きな体付きと、下半身周りの筋肉は、ひときわ目立っている。「実は昔から、足の太さやお尻の大きさがコンプレックスだった。でも海外でやってみたり、年齢を重ねていったことで、それこそが自分のストロングポイントだと気付けた」。

 正直、“舐めていた”フットサルは、それほど簡単ではなかった。「めちゃくちゃ頭の中がキツイ。動き方も違うし、覚えることも多いし、本当にサッカーとは違う競技」。それでも、見よう見真似でフットサルの動きを覚え、「日々勉強している。それに、戦術面はあるけれど、何よりも(横澤)直樹さんとかには、『自分の色を出せ』と言ってもらえているからこそ、かなり好きにやらせてもらえている」。

 自他ともに認めるポテンシャルの持ち主は今、まさに日を追うごとに成長を続けている。「正直、どこを目指せばいいのかもまだ分からない。でも日々、学びながら成長していけば、その過程で結果は付いてくる。体の強さとシュートは誰にも負けたくない。自分のストロングポイントだけは、Fリーグで一番になりたい」。

 利き足の左を自在に操る大型ピヴォは、かつて世界を席巻した元ブラジル代表・ベットンをほうふつさせる。もちろん、まだその力は未知数だ。この先、フットサルの奥深さに悩み、埋もれてしまうかもしれないが、一方で、フットサルの醍醐味を存分に披露するかもしれない、底知れない予感もある。

 今シーズンを終えたとき、Fリーグに突如として現れた“無名のピヴォ”が一躍、リーグ屈指のピヴォに大化けているかもしれない。小門勇太、24歳。ブレイク必至の、生粋のストライカーだ。

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