2017.06.19 Mon

Written by EDGE編集部

Fリーグ

湘南のルーキー・小門勇太が流した涙の理由。クラブを支え続けた“おじいちゃん”に捧げた地域の勝利。

写真:本田好伸

湘南ベルマーレは小田原アリーナでのホーム開幕戦にフウガドールすみだを迎えた。開幕戦で勝利したチーム同士の対決で、2連勝を飾ったのは湘南。試合後、Fリーグ初得点を挙げたルーキー・小門勇太はファン、サポーターの前で涙を流した。この勝利は、クラブを支えた功労者に捧げる、大きな意味を持っていた。
(取材・文 本田好伸)

クラブの功労者に捧げる“地域の勝利”

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 フットサル転向からわずか4カ月でデビューした小門勇太は、ホーム開幕戦で初得点を挙げた試合後、ファン、サポーターの前で涙した。この“無名のピヴォ”は、ある特別な思いを持って試合に臨んでいた。

 それは、クラブが抱く思いとも重なる。2006年のNPO法人化にも尽力し、その後、後援会小田原フットサルアカデミー(FAO)を立ち上げた柏木功氏が、6月15日に永眠した。

 湘南は、地域との関係性が深いクラブとして知られている。小田原市および西湘地区、2市8町の法人・個人が発起人となって2010年に発足した後援会がその最たる例だろう。FAOは、クラブ支援にとどまらず、小田原市を中心にフットサルを広める活動を続けてきた。クラブと地域をつないできた功労者の逝去に、選手、スタッフ、クラブ関係者はみな、肩を落とした。

 キックオフ前に黙とうが捧げられ、選手は喪章を巻いてプレーした。サポーターも「ありがとう130(いさお)」の横断幕を掲げて故人を偲ぶとともに、地域を代表する声援を選手に送り続けた。奥村敬人監督は試合後、「今日は地域の勝利」と語ったが、選手たちはまさに、そんなゲームを披露した。

 Fリーグが始まって以来、小田原のホームゲームに足を運べば、ピッチには必ず柏木氏を始めとするFAOやスポンサーの姿があった。時にはボールボーイや担架係も担当して、選手を間近で見守る光景は、湘南ならではのもの。そうして積み重ねてきた地域とクラブの絆は、この試合で、確かに感じ取れた。スタンドから届く声に選手が応え、選手のプレーでスタンドが熱気を帯びる。これがFリーグのあるべき姿──。

 柏木氏もきっと、この勝利を誰よりも喜んだに違いない。でも試合後、少しだけ不思議な光景を目にした。フットサルを本格的にプレーし始めたばかりの小門が、ピッチ上で行われたセレモニーで「FAO賞」を受賞して、涙を流している。「本当に特別な思いがあって……」と、言葉を詰まらせながら柏木氏への思いを口にしている。実は小門は、柏木氏を「おっちゃん」と呼ぶほどに、昔からの親しい間柄でもあった。

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