2017.06.13 Tue

Written by EDGE編集部

Fリーグ

大薗、春木、丹羽、中田……無名の若手が見せた最大級のインパクト。9ゴールで大勝したすみだが示した“育成力”。

写真:本田好伸

いよいよ幕を開けた新シーズン、開幕節を終えて得失点差で首位に立ったのはフウガドールすみだ。バサジィ大分との初戦を9-1で大勝した。主力の退団や引退、負傷離脱があるなかで、新チームに刺激を与え、チームを躍動させたのは、育成組織出身の選手たちだった。須賀雄大監督に言わせれば、それは“大抜擢”ではなく、「ベストメンバー」。そこには、10年先も戦えるチームづくりを続ける、クラブの真髄があった。
(取材・文 本田好伸)

杞憂に終わった開幕前の低評価

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「ゴールを狙っていたので、結果を出せて良かったです」

 あどけない表情を見せながら、たどたどしくもどこか自信を感じさせるコメント。特別指定選手としてフウガドールすみだでいきなりハットトリックを達成した大薗諒は、試合後のヒーローインタビューで嬉しそうに言葉を弾ませた。ゴレイロからのロングフィードをゴール前で競り合って頭で決めた1点目、セグンドポストに走り込み、シュートパスをダイレクトでふわりと合わせたテクニカルな2点目、そしてAbemaTVが選出する第1節のベストゴールに選ばれた、ゴール右45度からの豪快な直接FK。名古屋オーシャンズサテライトからクラブに加入した21歳の彗星の活躍は、今シーズンのすみだを象徴しているようだった。

 開幕前、すみだの下馬評は高くなかった。それどころかむしろ、大きな危機に直面しているのではないかとさえ思われていた。チームの勝敗を司る“天才”西谷良介の移籍、“大エース”太見寿人の引退、守護神・大黒章太郎の負傷離脱、そして開幕直前の稲葉洸太郎のケガも重なり、戦力の低下が懸念されていた。

 実際、登録12名のうち、昨シーズンの主力と呼べるのは、諸江剣語、宮崎曉、田村佳翔、渡井博之の4人だけ。ボラもシーズンを通してメンバー入りできていなかった。それに、新チームを背負って立つはずの清水和也も、昨シーズン終了後の日本代表遠征やスペインへの短期留学、エースとして戦ったU-20日本代表のAFC U-20フットサル選手権という過酷労働で蓄積した疲労から足を痛め、休養が与えられていた。すみだは大丈夫なのか……。そんな余計な心配が頭の中をよぎる。でも、それは全くの杞憂だった。

 須賀雄大監督にとっては、想定内の若手起用だったのかもしれない。もともと、育成組織を充実させ、若く才能のある選手を育てていき、10年先も戦えるチームを築き上げることは、地域密着とともにクラブが大切に考えてきたビジョンだった。須賀監督自身、「次の目標は、育成組織からFリーガーを誕生させていくこと」と話していた。だからこそ、一昨シーズンの金川武司、昨シーズンの太見の引退に際して、チームの新陳代謝を図りながら、若手とともに覚悟と我慢の戦いを続けることを選択した。

 すみだにとって、リーグ戦の開幕に向けて転機となったのが5月のリーグカップ戦「sfida Fリーグオーシャンカップ2017 in 北海きたえーる supported by LIFEGUARD」だった。須賀監督は大会前、「本気でタイトルを狙う準備をする。この大会を『選手の成長機会』と位置付けてしまうとフワッとするし、本気で優勝を狙うことで、身の丈が分かる。自分たちの現在地を知りたい」と話していた。

 迎えたバルドラール浦安との初戦、決定機でゴールを奪い切れないまま敗れたことで、調子を上げてきた育成組織、フウガドールすみだバッファローズの選手をトップに上げる決断を下す。須賀監督は開幕を前に、「今シーズンは34人で戦っていく」と話したという。トップチームとバッファローズの選手の合計人数は、34人。府中アスレティックFCとのトレーニングマッチでバッファローズが勝利を収めていたこともあり、チームにおけるバッファローズの存在は、今やトップを脅かすほどになっていた。

 開幕直前の6月4日に行われた名古屋とのプレシーズンマッチでは、特別指定選手に追加された中田秀人と、トップ昇格を果たした春木啓佑、丹羽脩人も出場し、春木はチームの勝利に貢献する貴重なゴールを奪ってみせた。開幕戦に向けて、チームは若く、生きの良い選手が刺激をもたらす形で仕上がっていった。

<次ページ>物語を紡ぎ出す、34人の戦い

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