2017.04.07 Fri

Written by EDGE編集部

Fリーグ

なぜ、若者はFリーグから去っていくのか? 21歳、水上洋人の“早すぎる引退”から考える

写真:本田好伸

日本フットサル界はシーズンを終え、どのチームも退団選手、そして新シーズンの獲得選手を発表し始めている。選手が辞め、新しい選手が加わる。何気なく繰り返される新陳代謝。そこには、決して目を背けてはならない現実もある。その象徴が、昨シーズンシュライカー大阪で2冠を達成したにも関わらず、現役を引退した水上洋人。高校からフットサルを始め、木暮賢一郎監督に才能を見込まれた21歳の若者はなぜ、“早すぎる引退”を選んだのか。そこには、今一度、Fリーグが目を向けなければならない大きな問題がある。
(取材・文 本田好伸)

フットサル転向からわずか4年後の引退

HND_2853

 これまでも多くの選手が、Fリーグや地域リーグから身を引いてきた。競技である以上、トップレベルに到達できない、もしくは自分の実力に限界を感じて、競技としてのプレーに区切りを付けるのは当然のこと。ただ、実力のある選手で、しかも20歳前後の若手選手が競技を離れてしまうことには大きな違和感が残る。

 2シーズン前、シュライカー大阪で主力として台頭した森秀太は、ボートレーサーを目指すことを理由に引退した。当時25歳。名古屋オーシャンズのサテライト出身で、木暮賢一郎監督の現役時代から師弟関係にあった森は、監督に重宝されるプレースタイルで存在感を示し、今後の日本代表を担う選手の一人だった。

 ただ彼の場合は、年齢制限のある業界にチャレンジするという前向きな決断でもあった。あれから2年、その大阪からまた一人、若くして引退を決意した選手がいた。

 水上(みなかみ)洋人、21歳。高校2年生のときにサッカーからフットサルに転向し、大阪サテライトで経験を積むと、高校3年生時に、木暮監督が指揮を執っていたFリーグU23選抜に選出された。その後、木暮監督就任1年目の大阪では特別指定選手として16試合ピッチに立った。翌シーズンに正式にトップ登録されると、登録28試合のうち20試合でプレーして3得点。その存在感は日を追うごとに増していった。

 2016シーズンも26試合でベンチ登録され、18試合出場2得点。今シーズンのチームの戦い方ゆえに、1秒も出ることなくベンチで見守る試合も増えたが、そもそも競争の激しいなかで登録12名に選ばれている事実が、監督が少なくない期待を寄せていることを物語っている。

 日本代表には、「ラージリスト」と呼ばれる“代表候補名簿”があり、一説には、水上もそこに名を連ねていたという。森と同じように、木暮監督に才能を見出された若きアタッカーは、歴史的なリーグ優勝を遂げた4日後、クラブのホームページを通して「現役引退」という衝撃的な決断を発信した。

 最後となった全日本選手権は、優勝が決定的となった決勝の残り数十秒で、村上哲哉、奥田亘といった、同じく今シーズン限りで現役引退する選手とピッチに立った。大歓声に包まれ、最高の歓喜の瞬間を迎えた。リーグ初制覇と日本一。このタイトルを引っさげて、この先のキャリアをさらに彩っていく道もあっただろう。

 水上はなぜ、“早すぎる引退”を決断しなければならなかったのか。

<次ページ>悩んだ末にフットサルを選べないという現実

1 2 3

◀︎前の記事 トップ ▶︎次の記事