2016.09.21 Wed

Written by EDGE編集部

Fリーグ

湘南の新守護神ファビオ・フィウーザは救世主になれるのか? ゴレイロ経験者のライターがデビュー戦を読み解く。

初対面から日本語で「こんにちは」

 では、この日派手なセーブが目立ったフィウーザは良くないゴレイロなのか?

 答えはもちろん、ノーだ。むしろ連携面が不十分な中でも、鋭い読みで何度も素晴らしい対応を見せた点はやはり称賛されるべきだ。味方のディフェンス時の癖も知らず、言葉も通じない。上記したような「失点の確率を下げるためのコーチング」がほとんどできず、「打たれたシュートを止めるしかない」状況が多かったなかであれだけのプレーを見せたのだ。

 フィウーザが味方のFP1人1人の特徴を覚え、同時にFPもフィウーザの特徴を知り、どういう切り方をすればフィウーザがプレーしやすいか、といった相互理解が進めば、失点の確率はグッと下がるはずだ。

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 また、フィウーザは試合中すでに「右! 左!」といった簡単な単語を使っており、日本語を習得しようとする意識が非常に高い。この前向きな姿勢には、ベテラン久光重貴も太鼓判を押している。

「彼は日本に対応しようとする気持ちが凄いです。Jリーグも含めて色んなブラジル人を見てきましたけど(久光はサッカーの湘南ベルマーレの練習場で働いていた)、来日した時点で挨拶や数字、右・左という言葉を覚えてくる選手はやはり“日本でやってやろう”という気持ちが強い選手だと思うんですよね。フィウーザは初対面の時から『こんにちわ』と日本語で挨拶してきましたし、自分からチームに入っていこうという意志を凄く感じるんです。プレーに関しても、お互いの意思を伝え合って確認しながらやっていきたいと思います」(久光)

 フィウーザと湘南にとって幸運だったのは、デビュー戦から次節まで1ヶ月以上のインターバルがあることだ。この中断期間で連携面でのすり合わせは大きく進むに違いない。初戦にしてあれほどのパフォーマンスを見せたのだから、チームにフィットすれば湘南のディフェンス力は一気に向上するはずだ。

 フィウーザは現在29歳。ゴレイロとしては徐々に脂が乗り始める時期である。また、これまで母国ブラジル以外にもスペイン、チェコ、ルーマニアなど、世界を渡り歩いてきた経験はここ日本でも必ず生きてくるに違いない。

 第12節まで湘南のゴールを1人で守り続けてきた若きゴレイロ上原拓也の更なる成長にも期待がかかるが、上原にとっても、フィウーザは良きライバルであると同時に、良きお手本となるはずだ。また、共にプレーするFPも、より高いレベルのゴレイロと日々相対することで得られるものは大きい。

「今日は初めてだったから色々と慣れない部分もあったけど、本当はもっともっと良いプレーができるんだ。ずっと日本に来たいと思っていたのでここに来られて本当にうれしい。この湘南ベルマーレで少しでも長くプレーして、チームの歴史に名を残したいと思っているよ」

 最後にそう語ったフィウーザ。取材後、初対面だったので名前を名乗り「Muito prazer(よろしくお願いします)」と言うと、フィウーザは何かを思い出すように少し考えてから「ヨロシク」と覚えたての日本語で返してくれた。久光が語ってくれた「日本に対応しようとする気持ち」というのはこういった部分のことなのだろう。筆者がこの記事で記した言葉や連携面の課題など、この男にとっては大したハードルではないのかもしれない。

 ファビオ・フィウーザ。地球の真裏からやってきた守護神が、湘南を高みへと導く。

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